研究課題
基盤研究(C)
本研究は、全ての疾病に関わる人類の脅威“難治性感染症”の克服を目的とする。菌血症や院内感染の起因菌第一位の「難治性MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症」は人類の脅威である。近年、第一選択薬のバンコマイシン(VCM)化学療法も奏功しない感染症再燃の症例が多数報告され、とくに造血器疾患をもつ易感染患者の場合は、敗血症や心内膜炎等による致死率が高い。しかし多数の症例報告数に比べ、その患者からほとんどVCM耐性菌は検出されず問題となっていた。そこで我々は、 VCM耐性菌の検出法を改良し検討した結果、世界で初めて1)新規表現型の「slow-VISA(バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌)」を見いだし、2)それがMRSA感染症再燃機構に関与していることをin vitro条件下で証明した。3)slow-VISA は増殖が遅く72 時間以降に生育してくるがsmall colony variant とは異なる性質をもち、4)既存のVISA の耐性化機構と異なることがSNPs 、トランスクリプトームやメタボローム解析より示唆された(緊縮応答の違い)。5)さらに、臨床分離MRSA 株からslow-VISA を検出するため、slow-VISAの検出方法を確立した(特許申請中)。6)確立したslow-VISA 検出法により国内18施設における血液培養由来MRSA958株を調査したところ、現段階で 215株中45 株がslow-VISA と判定された。以上より、既存の世界基準の方法(CLSI) では、MIC を48時間で判定するためVISA の検出数が少なく、増殖の遅い薬剤耐性菌を検出できなかったことが示唆された。7)臨床データと相関性を検討したところ、slow-VISA を検出した菌血症患者の死亡率と相関していた。現在、菌血症患者のslow-VISA の追跡調査を実施している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
PLoS One.
巻: 13(3) 号: 3 ページ: e0194212-e0194212
10.1371/journal.pone.0194212