研究課題
基盤研究(C)
「鎮静・麻酔薬」が、がん組織内微小環境へ与える影響をマウスの系を用いて検討し、以下の結果を得た。検討に用いた鎮静・麻酔薬のうち、ミダゾラムのみが低容量で①マウス単離脾細胞のインターフェロン(IFN)-γ産生能を温存しつつ、インターロイキン(IL)-10産生能を転写レベルで抑制し、②間質細胞(10T1/2)の脾細胞IFN-γ産生能に対する抑制作用を解消し、③口腔扁平上皮癌細胞株に作用し、10T1/2の免疫抑制作用の促進因子(IL-1α)の産生を阻害した。また④ミダゾラムの反復投与を受けた担癌マウスから単離された脾細胞は、10T1/2の免疫抑制作用に対して抵抗性を増す傾向が認められた。
日本は超高齢社会を迎え、かつては手術適応にならなかったような、多くの合併症を抱える患者や高齢者なども、手術適応と判断される時代となった。がん患者の周術期管理にかんしても同様であり、良好な予後のための鎮静・麻酔薬の選択方法の確立が急務となっている。本研究では、動物を用いた実験ではあるが、ミダゾラムが免疫担当細胞のみならず、間質細胞や口腔扁平上皮がん細胞にも作用してTh1型免疫反応を回復させる効果を持ち、がん組織内の免疫抑制環境の改善に寄与できる可能性を指摘できた。これらの結果は、周術期の薬剤選択を考える際の有用な基礎的資料であると考える。
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