研究課題
基盤研究(C)
国内で大規模な流行性角結膜炎の流行を経年的に生じているアデノウイルス 54型 (Ad54)のウイルス学的性質を明らかにするために,他の型のA549細胞におけるウイルス学的検討をin vitroで比較した。細胞変性効果の経時的観察,ウイルスコピー数の測定,細胞内ゲノム増加速度の計算を行った。早期転写因子E1遺伝子の発現量の測定と他の型との間の系統解析を行った。Ad54のウイルス量,増殖速度,E1遺伝子の発現は他の型に比較して遅かった。E1遺伝子系統解析では特にAd8と近縁であった。Ad54の増殖速度はその臨床的特徴との関連が考えられるともに,ゲノムレベルでの変異によることが示唆された。
今回の研究により,環境の変化によって出現し,現在国内で流行を繰り返している新型アデノウイルスのバイオインフォマティクスによる解析が行われ,流行を生じている特に54型について,遺伝子レベルの変異の究明が行われ,その性質が明らかになった。角膜の3D細胞実験モデルによる新型アデノウイルス型と既存の結膜炎を生じない型との間の病原性の経時的な差異が観察され,重症化の機序についての基礎的研究が深められた。そして特異的抗アデノウイルス作用を有する薬剤の作用を新型アデノウイルスに対して拡大し,病態に応じた解析が可能な3D細胞モデルも用いて,現在の流行により適した薬剤の開発を可能にする成果を得ることができた。
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