研究課題/領域番号 |
18K09917
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
村井 美代 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (00200254)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / 鼻腔保菌 / 咽頭保菌 / MRSA / ゲノム解析 / 口腔保健行動 / DNA型別 / 新しい生活様式 |
研究実績の概要 |
若年健常者における鼻腔・咽頭の黄色ブドウ球菌保菌実態を明らかにする目的で、大学3・4年生を対象に鼻腔前庭と咽頭の保菌調査を2016~18年の3年間で延べ313名の協力を得て実施した。その調査において、4名がMRSA保菌者で(保菌率1.3%)、鼻腔や咽頭から計6株のMRSAが分離された。保菌調査で得られた全ての黄色ブドウ球菌293株に占めるMRSAの割合は2.0%であった。 2023年度はこれらMRSA株のゲノム解析を行ったところ、6株中3株がトキシックショック症候群毒素(TSST-1)遺伝子tst-1を保有していた。そのうちST8/SCCmec IVlでtst-1を保有しているCA-MRSA/Jクローンが1株、1名の咽頭から分離された。この1名は鼻腔にはMSSA株を保有していたが、MLSTは同じST8であるもののSCCmec以外にも保有する毒素や耐性遺伝子はかなり異なっていたため、鼻腔と咽頭に保菌している菌株の関連性はないと判断した。また他の1名の咽頭と鼻腔から分離されたST5/SCCmec IVcでtst-1を保有する2株は、ほぼ同一株であった。同様に、もう1名の鼻腔と咽頭から分離された2株もST834/SCCmec IVcでtst-1を保有しない同一株であった。残る1名の鼻腔から分離された菌株はST1/SCCmec IVaであった。また、PantonValentine Leucocidin (PVL)を保有する株はなかった。 これらの若年健常人由来MRSA株は、いずれも日本の臨床で侵襲性の病変を起こす危険性が高いと報告のあったクローンに類似していた。特筆すべきは、6株中半分がTSST-1を保有していたことである。一方ST834/SCCmec IVcは小児で集団感染の報告があったSaitama株に類似していたが、その報告で分離された多くの株がTSST-1を保有していたのに対し、今回の保菌調査のST834株はTSST-1を欠いていた。これらの常在MRSA株のリスクについては、さらに検討を重ねる必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題については元々2018-2021年度の4年間を予定し、特に後半の2020,21年度では口腔保健指導を伴う介入研究を予定していた。しかし2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で新規の保菌調査を伴う研究を一時見送った。一方で、質問紙調査の詳細な解析により、単に歯磨き回数や歯間清掃補助具の使用だけでなく、口腔保健学を専攻する学生と同レベルでの口腔保健指導を伴う介入調査が必要との結論に到った。2021年度、研究期間を延長した2022年度においても、新型コロナウイルスの感染拡大により学生の感染者も相当数出たことから、学内で研究のために口腔保健指導を行うことに危機感を覚え、この研究費支給期間での介入研究は断念した。2023年度はMRSA株のゲノム解析を進めるため、新たに倫理申請を行って、オプトアウト期間を経て全ゲノムシークエンスの決定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
全塩基配列を決定したMRSAについて、詳細な解析を経てゲノムの特徴を明らかにしたうえで、臨床株の類似クローンと比較し、市中に保菌されているMRSAのリスクを評価する。
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