研究課題/領域番号 |
18K11810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
山崎 圭一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (10282948)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ブラジル / 住宅金融 / 都市政策 / 不動産の所有権の安定性 / 抵当ローン / 公営賃貸住宅 / 福祉国家 / 左派政権 / ボルソナロ大統領 / 準クーデター / 住宅政策 / ソーシャル・ハウジング / 金融包摂 / 貧困対策 / マス・ハウジング / 労働者党 / 公共政策 / ボルソナロ政権 / 金融深化 / 住宅ローン |
研究実績の概要 |
22年度は住宅政策と住宅金融に関する国内外の最新文献数十冊を整理し、金融包摂による住宅問題解決についての肯定、否定、中立の見解に分けた。その上で22年度は否定的評価に絞り分析を進めると同時に、住宅金融システムの国際比較を進めた。 国内外の既存研究について次の到達点が確認された。第1に国際比較については、Gregory W. Fullerは、The Political Economy of Housing Financialization(Agenda Publishing,2019)で、5類型に住宅政策を分けている:1)アングロ・ダッチ・リベラリズム型;2)スカンジナビア型金融化型;3)大陸的中間型;4)南欧伝統型;5)欧州のポスト共産主義国型。1)と2)は金融制度による住宅持ち家政策が推進されている地域を指しており、住宅の「商品化」が特徴である。「商品化」の反対は、財政政策によるソーシャル・ハウジング(SH)の提供で、具体例は低家賃公営賃貸住宅の供給である。第2に否定的研究の代表として、ブラジル(伯国)のサンパウロ大学のRaquel Rolnik教授の業績Urban Warfare: Housing under the Empire of Finance (Verso、2019)がある。教授は2000年代以降の途上国の経済成長過程で生じたアーバン・ルネッサンスの波の中で、都心再開発が進み、低所得者の立ち退きが進んで住宅問題は悪化した批判する。全世界でSHが衰退し住宅が「商品化」したが、今後はSHを増やすなど、金融包摂ではない公共政策の拡充が必要だと結論する。 成果発表として、伯国住宅金融論で1本、住宅以外の伯国論で2本、あわせて3本学会報告を行った。本は、住宅論ではないが伯国に関して共著で2冊(1冊は英文図書)刊行し、論文は都市論で1本が査読つき国際誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22年度の研究によって、全世界の住宅政策やモーゲージ政策の動向が国際比較に基づいて把握され、その中に伯国を位置づけることができるようになった。すなわちFullerの5類型の完全には当てはまらないが、モーゲージを基軸にした政策体系なので、アングロ・ダッチ・リベラリズム型に近い。また住宅問題の世界的動向の把握をふまえて(総じてスラム街が増加するなど悪化)、住宅政策全体を見渡した場合に、金融包摂のアプローチの位置が相対的に明確になった。0か1かの単純な評価ではないが、モーゲージ政策の限界が明確になった。すなわちアーバン・ルネッサンスや都心再生事業など都市政策の影響による立ち退きの増大という文脈をふまえて考察すると、財政政策によるソーシャル・ハウジングの拡充の重要性が理解できる。都心から退去となった貧困層は、職を失う場合がおおく(都心特有のインフォーマルな仕事に従事していたので、都心から離れると失職する)、モーゲージで救済できる水準未満となる。この場合、財政による救済が求められる。こうした事情をふまえて、金融包摂の手法の可能性について展望する必要がある。 「当初の計画以上」とは評価できない理由は、パンデミックの影響で2022年も現地調査が実施できなかったため、モーゲージ拡大の可能性についての現地の情報が得られていないことである。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は最終年であるが、現地調査を実施する。まず第1に、いくつかの大都市の住宅問題の状況を、州政府あるいは市政府の住宅課を訪問して、確認する。とくに、都市再開発による地価高騰の状況と、都市再開発事業それ自体と地価高騰による貧困者の「追い出し効果」がどのようであるかを確認する。第2に、ミナス・ジェライス連邦大学(ベロ・ホリゾンテ市)のジョアン・ピニェイロ研究所を訪問する。ここは伯国における住宅政策研究の拠点である。第3にブラジリアの連邦政府機関を訪問する。とくに伯国の公的モーゲージ制度であるMinha Casa Minha Vida Program(私の家、私の人生計画)の担当部署を訪問し、住宅金融の動向のデータを収集する。第4に、公営住宅建設事業とくに参加型建設の現場を訪問し、住民に取材をする。第5に、日本からZoom等のオンラインで取材可能な取材先を確定し、日本からの取材も進めたい。以上の情報をえて、分析を進め、成果を英文の国際誌(Journal of Urban Affairs等)および国内誌に投稿し、ラテン・アメリカ政経学会などで学会報告を実施する。
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