研究課題/領域番号 |
18K11818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
新田 義修 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (80455534)
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研究分担者 |
植田 眞弘 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (60223468)
山本 健 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (10452997)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 水産業クラスター / バリューチェーン / 海面養殖業 / 水産加工業 / 雇用促進 / 東日本大震災津波 / 加工業 / シナジー効果 |
研究実績の概要 |
2022(令和4)年度は、前年度に引き続き、定置網漁業の現状と課題を整理し、水産加工業の基盤となる地場のサケ、サバなどの魚類及びトラウトサーモンの海面養殖の結果を検証した。まず、事例地域の主な収入源である「定置網」の現状は、2021(令和4)年に引き続き「秋サケ」の漁獲量は不漁であった。岩手県の「秋サケ」漁獲量は、289tであり2021(令和3)年の245tとほぼ同じ水揚げ量であった。この水揚げ量は、2001年度(24,462t=100)を基準年とするとわずか、1.18%であった。同じく、北海道(同51.5%)、青森(同12.8%)と比べて極端に漁獲量が少ないことがわかる。そのため、事例としている宮古漁協(「みやこ漁業だより(2023年1月発行)」)の「秋サケ定置漁業」の実績は、1万尾(2,000万円)という厳しい状況を示している。このような状況のため、分析対象としてきた宮古管内の水産加工業社の原料調達機能に課題が生じていることが示唆された。 この状況を解決するために実施されている、宮古漁協と三陸やまだ漁協のトラウトサーモン養殖(海面養殖)の取組は、2021年に引き続き、平均単価がそれぞれ、1,036円/kg(宮古漁協)、1,200円/kg(三陸やまだ漁協)となった。この値は、2021年800円/kg(トラウトサーモン、宮古産)であったことを考えると相対的に高い価格であると言える。なお、宮古漁協は、200tを生産計画に掲げており、2022年度の実績が1.12億円となった。定置網による秋サケの実績が2,000万円であったことを考慮すると、基幹的な魚種とは言えないまでも新たな収入源になる可能性を示唆した。さらに、事例としている三陸やまだ漁協では、50tと先行する宮古より漁獲量が少ない事例であるが、海面養殖の生産システムを構築しつつあり、今後の展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年12月に宮古市の唯一の大型ショッピングセンター(キャトル宮古)がCOVID-19禍で売上高が減少したことによって、破産・閉店したことによる流通・販売面での影響はあったと示唆される。分析対象としてきた宮古産トラウトサーモンは、宮古の魚市場を通じて市内に流通させていたため、ショッピングセンターの閉店による影響はなかったとは言えない。 また、定置網に関わるサケのふ化場について「県さけます増殖協会」が岩手県内17箇所で運営してきたふ化場を6箇所に集約する計画があるため、6箇所に残る宮古とリストに入っていない織笠(山田町)では、今後の対応方法に差が見られることが予想される。秋サケの水揚げ量が激減した要因として、岩手県水産技術センター漁業資源部(2022.11.24.)によると「河川において、5歳魚(2017年級)の回帰尾数が少ないことが共通しており、全体の回帰尾数の減少の原因となっています。」と分析している。 本研究では、①企業間連携によるシナジー(相乗)効果、②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築、③雇用創出効果の解明について調査研究を行っている。2022年度は、主に水産業クラスターの再構築について調査研究を行った。 今後は、「宮古トラウトサーモン」(宮古漁協)、「岩手三陸やまだオランダ島サーモン」(三陸やまだ漁協)のロットを増やし、宮古・山田地域に集積している水産加工業者による市場の開拓や加工品の開発などを通じた「需要創造」に関わる生産組織としての漁協と加工・流通業者の関係の構築に注目したい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、主に①企業間連携によるシナジー(相乗)効果と②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築の最終とりまとめを行う。 まず、①企業間連携によるシナジー(相乗)効果は、新たな資源獲得のために行うものと、新たなビジネスモデル構築を目的にしているものであった。過去4間で漁協による新商品(トラウトサーモン)導入に伴う、技術移転とフィージビリティースタディー及び実証実験(テスト販売)、商業化(「宮古トラウトサーモン」(宮古漁協)、「岩手三陸やまだオランダ島サーモン」(三陸やまだ漁協)を実施したことについて実証的に調査・研究を行う。これに関連して、②バリューチェーンの再構築と水産業クラスターの再構築について宮古市を含む周辺地域への調査を引き続き行う。これまで震災復興として注目されてきたサケ、ウニ、アワビ、イカなどの商品が、不漁により相対的に注目度が低下したと想定されていた。 2023年度は、漁協や企業が取り組むべき課題について、バリューチェーンの再構築に関する側面から再検討を加える。その上で、将来のあるべき姿を設定した上で、「バックキャスト法」を援用して、単一事業のバリューチェーンを商品構成と顧客の関係として示した上で、「シナリオプランニング」を用いて今後の方向性について検討を行う。
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