研究課題
基盤研究(C)
近年,自動運転車など,システム(機械)が人間の感覚運動機能に自動的に介入する情報技術の実装化が急速に広まっている。近い将来,こうした自動化技術によって機能が拡張された個人を含む社会的インタラクションが日常的なものになることが予想される。本研究課題の目的は,自動化技術の感覚運動機能への介入が,社会的インタラクション場面の視覚情報に基づく社会的判断に与える影響について検討するというものであり,本年度の主な研究実施計画は,昨年度行った予備実験の結果をもとにパラメータを調整したプログラムを用いて本実験を開始し,集めたデータに対し解析を行い,研究をまとめることであった。具体的には,本実験において,実験参加者はモニタ上でプログラムによって制御された他者アバターと競合あるいは非競合課題を行い,自分あるいは他者が用いるアバターの性能の違いが,パフォーマンスの評価や社会的判断にどのように影響を及ぼすのか検討した。その結果,非競合課題においてはアバターの性能の違いによって社会的判断に違いがないものの,競合課題では,自分と他者の用いるアバターの性能が異なる場合に社会的判断が異なることが認められた。特に,自分と他者のアバターの性能が異なる場合は、どちらが性能の良いアバターを使っているかどうかということに関係なく、非競合課題時よりも課題の結果への責任感が低下することが明らかとなった。この結果は,自動化技術によって機能が拡張された個人を含む社会的インタラクション場面において問題が発生した場合,問題によって引き起こされる結果への責任感が希薄になる可能性を示唆する。自動化技術の感覚運動機能への介入が,社会的インタラクション場面でどのような影響を及ぼすかを検討した研究の例は少なく,本研究の結果は,ヒトと自動化技術との快適な共生生活の実現を目指すデザインを考案するうえで,有用な基礎的知見を提供しうる。
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