研究課題/領域番号 |
18K12056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平方 秀男 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70271509)
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研究分担者 |
杉田 尚子 京都大学, 医学研究科, 助教 (20750532)
伊井 仁志 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (50513016)
巽 和也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 静脈血栓塞栓症 / トロンビン / 数理モデル / 移流拡散 / エコノミークラス症候群 / 血栓塞栓症 / 数理モデル化 |
研究実績の概要 |
静脈血栓塞栓症(VTE)は発症予測が困難で高率に突然死する。 現在のVTE発症予測は臨床的な危険因子を列挙するにとどまり有効性に疑問が残る。新鮮な静脈血栓の力学的性状が発症のカギをにぎるが、詳細は不明である。血栓形成・構造などは主要な凝固因子であるトロン ビンの拡散・濃度分布や流れ方が重要と考えられる。 我々はすでに独自のマイクロ流路システムを自作して血流中で様々な条件設定(温度、血小板数、流速、ヘマトクリットなど)の下で「リアルタイムに血小板からフィブリンが発生・ 成長する様子」や「せん断速度やヘマトクリットと共にフィブリン繊維の配向性が変化すること」を見出してきた。 そこで、この技術を応用して様々な条件下でトロンビンを可視化して、血栓形成~成長・構造と対比して様々な条件が血栓構造などに与える影響を解明することとした。 トロンビンを蛍光として測定する方法は数多く報告されているが、マイクロ流路内で流血中のトロンビンを我々が使用している蛍光顕微鏡により可視化するのに適した方法を見出した。活性化した血小板膜表面上でトロンビンバーストが起こることは知られていたが、実際にはこれまでの定説のように一部の血小板だけで起こるのではなく、少なくとも反応初期にはほとんどの血小板で起こっていることを突き止めた。この成果の発表を国際血栓止血学会で予定していたがCOVID-19の影響で中断している。 また、トロンビン濃度変化をリアルタイムで可視化する方法論も確立した。トロンビンバーストの基礎となる細胞内カルシウム濃度は一つの血小板上でも時間と共に濃くなったり薄くなったりという変化を繰り返すことも見出した。また、形成中の血栓の内部でトロンビン濃度は極めて高濃度となることも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述のごとく多くのステップ、たとえばトロンビンの可視化や血栓形成~成長をリアルタイムでとらえるなどのステップは順調に進行した。 しかし、新型コロナウイルスまん延が研究遂行にブレーキをかけた。 我々は共同研究者がいる工学部の実験室を借りて実験していた。 実験が複雑であるため2-3名で同時進行的に手分けして一つの実験を遂行するスタイルをとっていた。しかし、京大病院からスタッフは他学部施設(この場合工学部)への出入り禁止という命令が出されてしまったため、実験の進行が大きく阻害された。この影響で、血流中でのトロンビンの「拡散・濃度分布・流れ」と血栓形成~成長の同時観察が遅れている。 同時観察の障害になっていた技術的問題点のいくつかは改善してきた。 例えば、トロンビンの可視化試薬は紫外線照射を必要とするが、あまり強い紫外線を照射すると血液そのものに影響が出る。そこでトロンビンの生成だけでなく「拡散・濃度分布・流れ」を可視化するためにはトロンビン可視化試薬をやや高濃度で使用する必要があったが、高感度カメラが使用できることとなり改善した。実験室の室温変化による血栓形成への影響も問題であったが、ヒートブロックなどを追加使用することで改善した。 本年度には京大病院による他学部への出入り禁止令が停止される見込みである。そこで、トロンビンの「拡散・濃度分布・流れ」と血栓形成~成長の同時観察を可及的速やかに確立して、各種条件設定下(ヘマトクリット、温度、せん断速度、血小板数など)における、活性化した血小板近傍の「トロンビンの拡散・濃度分布・ 流れ」と「血栓形成~成長・構造」を同時にリアルタイムで観察するというステップへ進展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度には京大病院から出されている他学部への出入り禁止令が停止される見込みである。これを受けて、可及的速やかに実験が正常にできる環境を再び確立する。そして、最初にトロンビン「拡散・濃度分布・流れ」の可視化と血栓形成~成長を同時にリアルタイムでとらえる方法を確立する。 次に、この技術を応用して各種条件設定下(ヘマトクリット、温度、せん断速度、血小板数など)で活性化した血小板近傍の「トロンビンの拡散・濃度分布・流れ」 と「血栓形成~成長・構造」を同時にリアルタイムで観察する。蛍光共焦点顕微鏡も使用許可が下りたので血栓の三次元構造も可能であれば観察する。これらのデータを用いて、以前作った血栓成長の移流拡散反応モデルを精密化することで様々な条件が「トロンビンの拡散・濃度分布・流れ」「血栓~成長・構造」に及ぼす影響解明への第一歩とする。 本研究は血栓の構造や発生・成長過程と様々な条件を数理モデル化することでVTE予測~予防~救命という医療への革新的な技術提供の第一歩を目指すものである。さらに、本研究で得られるデータは流体力学で未解明である赤血球などのかく乱因子がある場合の移流拡散問題の基礎データともなるので、巽(分担)が参画する移流拡散に関する国際研究グループにデータを提供し流体力学分野にも貢献する。 さらに血栓症が多いとされる“うつ病患者”を杉田(分担)がリクルートし臨床経過を観察すると共に患者血液の場合では拡散・分布や血栓形成が健常人と異なるか否かも明らかにする研究への発展もにらんでいる。
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