研究課題/領域番号 |
18K12202
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
庄司 史生 立正大学, 仏教学部, 准教授 (00632613)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 後期インド仏教 / 般若経 / 三母広注 / 十万頌広注 / 世尊母伝承随順 / 仏説論 / 如来蔵 / 大乗仏教 / ネパール写本 / ダンシュトラセーナ / ジャガッダラニヴァーシン / 正法 / インド仏教 |
研究実績の概要 |
令和4年度は引き続き、本研究の基礎文献となる『三母広注』および『十万頌広注』とその影響を受けて編纂されたとされる『世尊母伝承随順』の翻訳作業と校訂テキスト作成を進めた。 本研究課題推進の成果は、毎年日本印度学仏教学会の学術大会で発表を行っている。平成30年度は「八千頌般若と二万五千頌般若の比較研究-ネパール系梵本を手がかりとして-」、令和元年度は「『八千頌般若』「須菩提品」とは何か-『世尊母伝承随順』による理解を手がかりとして-」、令和2年度は「後期インド仏教における正法五千年説」、令和3年度は「後期インド仏教における大乗仏説論」、令和4年度は「般若経注釈文献における如来蔵思想」と題する発表を行った。またこの他の学会での発表、そして学会誌や紀要等への論文発表を毎年継続して行っている。特に、令和4年度はコロナの影響により2年延期されて開催されたXIXth Congress of the International Association of Buddhist Studiesにおいて、本研究の成果の一部を発表した。 本研究の推進により、インド仏教史上における『現観荘厳論』に基づく般若経解釈と、『三母広注』に基づく般若経解釈という二つの系譜のうち、未解明な部分が多い後者の解釈史が多少なりとも明らかとなり、それによってインド仏教全体における般若経解釈史の解明が可能となり、インド大乗仏教の発展過程の解明の一助となると考える。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、当初の研究実施計画からの変更を余儀なくされたが、研究は継続して推進し、その成果は毎年公表し現在に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日常的な業務に費やす時間が増え、本研究課題に取り組む時間を十分とることができなくなってしまっていた。令和元年度の時点で『三母広注』全27巻のうち、第1巻と第20巻、第27巻を今回の研究の主たる範囲とする方針を固めていたが、研究の進捗状況をもとに、特定の章を対象とする範囲を限定した研究ではなく、同テキスト内における特徴的な思想や教理がみられる箇所を抽出し、仏教思想史上における同テキストの位置付けを明らかにする研究を行う方向へと方針を転換した。 本研究の基礎文献である『三母広注』は、従来研究が進められてこなかったものであるが、本研究課題の推進により、その教理的特徴の一端が解明され、またインド仏教史上におけるその位置付けを多少明らかにすることができたと考えている。 具体的には、『三母広注』には、従来指摘されることがなかった北伝大乗仏教における正法五千年説が説示され(従来は南伝上座部大寺派の正法五千年説のみが知られていた)、かつ同説が、マンジュシュリーキールティ著『三昧王経注』やダシャバラシュリーミトラ著『有為無為決択』に言及されているということ、また『三母広注』の「菩薩」理解は『宝性論』所説の如来蔵説をふまえたものであると考えらえること、さらに『三母広注』をふまえて後の12世紀に著された『世尊母伝承随順』ではいわゆる大乗仏説論が展開されことが明らかになり、インド仏教最後期においてもなお大乗仏教は自らの正統性を主張し続けていたこと等を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は引き続き『三母広注』と『世尊母伝承随順』および『十万頌広注』の翻訳作業と校訂テキスト作成を進める予定である。 令和5年度が本研究課題推進の最終年度となることから、本研究課題の「もうひとつの般若経解釈史」とは別の般若経解釈史とを対比させ、インド仏教全体における般若経解釈史解明を目指す。具体的にはインド仏教史上における般若経解釈の系譜には『現観荘厳論』による八現観説に基づくものと、『三母広注』による三門十一異門説に基づくものとがあることが知られているが、このような般若経解釈の二つの系譜において伝承される般若経自体がそれぞれ異なった系統のものであった可能性があると予想される。つまり、二つの解釈があったことから、結果的に二つの系統の般若経が現存することになったとの想定が可能であろうと考えられる。 今後は、般若経とその解釈史の全容を包括的にとらえ、般若経を例として、インド仏教における大乗経典の受容とその展開の解明を目指す。またその成果を積極的に公表していく予定である。 なお、令和4年度は、それ以前の時点でいずれ取り組むべき課題としてあげていた『二万五千頌般若』の付番作業は行わず、上記文献の解読作業を主として進めた。今後、時間的に余裕があれば『二万五千頌般若』の付番作業にも取り組むことにしたい。
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