研究課題/領域番号 |
18K12279
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
栗本 賀世子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (80779661)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 入内 / 後宮 / 殿舎 / 内裏 / 后妃 / うつほ物語 / 源氏物語 / 竹取物語 / 皇位継承 / 桐壺 / 竹河巻 / 参院 / 皇妃 / 匂宮三帖 / 薄雲巻 / 朝顔巻 / 紅梅巻 |
研究実績の概要 |
2023年度は、まず論文「入内拒否をめぐる天皇・東宮側の反応―竹取・うつほから源氏物語へ―」(『古典文学研究の対象と方法』2024年、花鳥社)を発表した。平安時代は女性が天皇・東宮に求婚されることは大変名誉あることであり、史実ではこれを拒否した例はほとんど存在しない。しかし、『うつほ物語』や『竹取物語』では、入内拒否する側の人物の超越性を示すため、女性と天皇の精神的恋愛を実現するため、あるいは拒否後の女性の結婚相手の男の天皇・東宮以上の理想性を示すために、入内拒否を描いていることを明らかにした。また、『竹取物語』では帝の代理たる内侍がかぐや姫の入内拒否を非難したこと、『うつほ物語』では清原俊蔭の娘の入内を拒むという行為が嵯峨院や朱雀帝に驚嘆すべき出来事と思い返されていること、在原忠保が入内拒否によって朝廷から排除された可能性があることを指摘し、さらに入内拒否の判断を下した史上の藤原済時、『竹取物語』のかぐや姫、『うつほ物語』の清原俊蔭・在原忠保が、いずれも常人とは異なる考え方を持つ変わり者の人物として評価されていることに注目し、一般的に入内拒否が信じ難い行為として見なされていたことを改めて確認した。 次に講演「天皇をめぐる女サバイバルー後宮空間論―」(第34回源氏物語アカデミー、2023年10月21日、於ホテルクラウンヒルズ武生)では、平安時代の史実および文学における天皇と后妃の住まいや生活形態について考察した。そして、当時の後宮における后妃同士のいさかいの事例を取り上げて検討し、天皇と多くの后妃が同居する生活形態では、后妃たちが他の女性を寵愛する天皇の姿を側で目にすることから、嫉妬や憎悪により熾烈な争いやいじめが頻発したことについて論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進める中で新たに論じたいテーマなども出てきたため、当初の予定とは異なり、藤壺の宮・玉鬘・明石の姫君の入内問題について論文化できていない。 (調査についてはおおむね終えている)
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまでの後宮殿舎に関する成果を一冊の本にまとめる予定である。また、既に口頭発表した『源氏物語』の光源氏の青年期の内裏住みの問題について論文化を目指す。 この他、『うつほ物語』に見られる東宮妃あて宮の参内拒否の出来事が史上の藤原詮子の参内拒否を素材としていること、さらに『うつほ物語』のあて宮の描写が歴史物語『栄花物語』の詮子の描き方にも影響を与えたことなどについて考えていきたい。 余裕があれば、先帝の皇女であった藤壺の宮の入内の意味について考察し、平安時代の帝が皇族庇護の理念を抱いていたこと、藤壺入内の裏にも桐壺帝の内親王を庇護しようとする意図があったことを明らかにしていく。
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