研究課題/領域番号 |
18K12310
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02020:中国文学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井口 千雪 九州大学, 人文科学研究院, 講師 (70740695)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 曲文学 / 散曲 / 明代武官 / 陳鐸 / 陳大声 / 明代散曲 / 武官と文学 / 明代白話小説 / 武官 / 軍士 / 三言 / 二拍 / 史書 / 馮夢龍 / 水滸伝 / 歴史書 / 南宋 / 金瓶梅 / 三言二拍 / 明代の戸籍制度 / 軍戸 / 『三国志演義』 / 『水滸傳』 / 明代 / 武定侯郭勛 / 三国志演義 / 白沙学 / 李開先 / 高儒 |
研究実績の概要 |
2023年度は、明代の武官による文学活動の様相を明らかにするため、伝記資料や書籍目録を用いて、武官で文学活動を行っていた人物を調査し、その著作の現存情況や内容について研究を行った。 特に、明代中期の成化・弘治年間の武官である陳鐸(字大声)という人物が、当時、曲の名手として名を馳せ、その曲は明代後期に至るまで妓楼の芸者によって好んで唱われ、さらに白話小説『金瓶梅』にも少なからず引用されていることに注目し、中国国家図書館に現存する陳鐸の曲集、『明刻坐隱先生精訂陳大聲樂府全集』の影印版を精読して、彼が武官でありながら曲文学に精通した背景を詳しく考察した。 まず、陳鐸の著作について、現存するもの、現佚のものの整理を行い、先行研究の不備を指摘した。陳鐸の履歴については、先行研究と概ね一致する結果となったが、陳鐸が、明嘉靖十年に曲集『雍熙樂府』(陳鐸の曲も多く収録する)を刊行した武定侯郭勛と遠縁の親戚に当たることを発見し、公侯家の武官家において曲文学の継承が行われていた可能性を新たに指摘した。 そして、何故陳鐸が武官でありながら曲文学に身を投じたのか、その背景については、そもそも明代武官は世襲制であり、一種の貴族階級であったことから、幼少時より学堂に入れられ(或いは家庭教師をつけて)、相応の学問を身につけることが求められた可能性があり、そのことが、文学活動への興味へと繋がったものと指摘した。 また、武官と妓女は古来より切っても切り離せない関係にあり、武官の子息であった陳鐸も幼少時から妓楼に出入りする機会が多かったはずで、そこで見知った妓女から琵琶・琴・三弦といった楽器演奏技術を学んだ可能性がある。その技術があったからこそ、楽曲と詞の調和が求められ、且つ即興性を要する曲文学を制作し、広く享受されるほどの優れた作品を残すことを可能にせしめたものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、明代武官の著作を調査する計画であったが、概ねそれを達成することができた。しかし、本研究科目に費やし得る研究時間が十分ではなかったため、未だ完全には行われておらず、各蔵書機関での調査も行えなかった。残る課題は2024年度に取り組む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き、明代の武官による文学活動の様相を明らかにするため、伝記資料や書籍目録を用いて、武官で文学活動を行っていた人物を調査し、その著作の現存情況や内容について研究を行う。 2023年度に行った陳鐸の文学活動の研究と同様の方法で、例えば明中期の武官・沐昂や袁彬、明末の武官・李言恭や萬表、兪大猷の著作の調査、精読を行い、彼らの文学活動の背景を探る。これらの人物はいずれも明代史における重要人物であると思われるが、現在の所、文学の分野のみならず、歴史分野でもあまり詳しくは論じられておらず、彼らの履歴や活動を明らかにすることは、多方面において新たな知見をもたらすことができるものと考える。 著作の閲覧にあたっては、『四庫存目叢書』や『続修四庫全書』といった叢書に収録されているものは九大図書館で閲覧可能であるが、国会図書館・国立公文書館・京都大学人文科学研究所で閲覧する必要があるものもあるため、調査旅行を計画している。 また、文学活動を行っていたことが明らかである武官で、著作が現存していない者も多数発見しているが、彼らについても、(1)歴史文献から履歴を詳しく調査する、(2)同時代の文人の詩文集や地方誌にやりとりした詩文が残っていないか調査する、といった方法で、研究を進めたい。
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