研究課題/領域番号 |
18K12346
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西尾 宇広 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (70781962)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | ドイツ文学 / 公共圏 / ジャーナリズム / 文化史 / マスメディア / 19世紀 / 時間意識 / フィクション / フランツ・グリルパルツァー / 世界文学 / ベルトルト・アウエルバッハ / 三月前期 / アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ / カール・グツコー / ハインリヒ・フォン・クライスト / 社会ダーウィニズム / 暦 |
研究成果の概要 |
本研究は「公共圏」という社会的カテゴリーを規定する文化史的諸前提の一端を、18・19世紀のドイツ文学に関する事例研究に基づき、「時間性」と「虚構性」という観点から明らかにした。 第一に、当時の作家の自己理解には、流行の変転の中で消費される出版物の刹那性と、後世にまで読み継がれる文学作品の永続性という、二つの時間意識の間の振幅が確認できる。第二に、部分的にそれとも連動する〈真実〉の流動性と不変性への意識には、文学の虚構性に対する反省が含意されている。ここには、真理と理性を奉じる啓蒙主義時代に成立した近代的公共圏にとって、逆説的にも文学という虚構による媒介が不可欠の構成要素であった可能性が窺われる。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
近代的公共圏の文化史的諸前提に、「時間性」と「虚構性」という観点から光を当てた本研究の学術的意義は、これまで主に社会科学の分野で議論されてきた「公共圏」という主題に対し、「文芸公共圏」概念(J・ハーバーマス)の持つ重要性を再評価するための具体的展望を示した点に認められる。また、本来的にフィクションによって媒介された空間として公共圏を捉える本研究の視座は、公共の言論における虚実の境が曖昧化され、世論や社会運動の形成に際して他者の「共感」を集めることの重要性が高まっている現代のメディア環境において、新たな公共圏モデルを構想するための基盤的知見として、潜在的な社会的意義を有している。
|