研究課題/領域番号 |
18K12347
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
井関 麻帆 福岡大学, 人文学部, 准教授 (70800986)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2018年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 仏文学 / 思想 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ルソーの諸作品に描かれる父親と、18世紀フランス文学作品に描かれる父親とを比較検討し、「ルソーにおける父親像」の特徴を明らかにした上で、18世紀フランスという時代のなかで変化する「父親」の社会的役割との関係、つまり「ルソーにおける父親像」誕生の歴史的意味の解明を目指している。 令和4年度は、18世紀フランス文学作品、特にディドロの作品に描かれる父親の考察を行った。ルソーと同時代に活躍した啓蒙思想家ディドロは『百科全書』の編集者として知られているが、父親を題材とした作品を残した作家でもある。そこで、自伝的要素の強い『ある父親と子どもたちとの対話』および『父と私』、さらに戯曲として創作された『一家の父』と『不幸な父親たち』の四作品から浮かび上がる父親像を分析した。 その結果、前者には、子どもたちと対等に議論し、子どもたちから敬愛される父親を、後者には「父の呪い」と称される「父権」を行使する父親を見出すことができた。慈愛に満ちた父親のなかに専制的な「暴君」たる父親が現われ、再び慈愛に満ちた父親に戻っていく様をディドロは克明に描いていた。このようにディドロの父親像は、旧来の「専制的な父親」から来るべき「近代的な父親」へと移りゆく、過渡期の父親像を象徴していることが明らかとなった。これらの研究成果は、福岡大学が刊行する紀要に投稿論文として報告した。 また、ルソーの霊廟があるパリのパンテオンで開催された国際シンポジウム(10月)に参加し、これまでの研究成果を口頭で報告した。本シンポジウムは一般に広く公開され、200名を超える聴衆が参集し、高い評価を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和されたため、パリのパンテオンで開催された国際シンポジウムに参加し、研究成果を口頭で報告することができた。本シンポジウムを通じて、文学のみならず哲学や政治思想の観点からルソーを研究している専門家や、18世紀フランス文学を専門とする研究者との意見交換を行い、本研究課題を深化発展させるための重要な視点を得ることができた。 また、フランス国立図書館において資料調査を行い、日本国内では閲覧することのできない文献や学術論文などの考察から、本研究課題を完成させるための重要な情報を得ることができた。 以上のことから、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、これまでの研究によって明らかになった18世紀フランス文学作品に表象される父親像の変容過程を精査し、社会変動のなかで誕生した「ルソーにおける父親像」の歴史的意味を解明する。 1)ローマで開催される国際18世紀学会において、これまでの研究成果を口頭で報告する。同学会には世界中から18世紀に関連する多分野の専門家が参集するため、彼らとの意見交換を通じて最新の研究動向を把握できると同時に、本研究課題を深化発展させるための有益な情報や、分野横断的な視点からの複眼的な考察が期待できる。 2)これまでの研究成果を総括し、18世紀フランス文学作品に表象される父親像の変容過程のなかに「ルソーにおける父親像」を位置づけ、近代家族の誕生ひいては社会変動との関連性を見出す。さらに、この考察を通して「ルソーにおける父親像」誕生の歴史的意味を明らかにし、本研究課題を完成させる。 最終成果は、国際会議における口頭発表や国際学術誌への投稿論文を通して、国内外に広く発信したい。
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