研究課題/領域番号 |
18K12406
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 鎌倉女子大学 (2020-2022) 東京大学 (2018-2019) |
研究代表者 |
銭谷 真人 鎌倉女子大学, 教育学部, 講師 (80793348)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 日本語史 / 表記史 / あて字 / 熟字訓 / 日本語歴史コーパス / 人情本 / 読本 / 白話語彙 / 白話小説 / 洒落本 / 雑誌『太陽』 / 国語史 / 表記 / 語彙交渉 |
研究実績の概要 |
本年度は読本に見られる「あて字」のルーツを、どこまで白話語彙に求められるかの調査を行った。前年度までの調査においては、読本から抽出した「あて字」を日本語歴史コーパス(CHJ)で検索し、近世の洒落本、人情本、近代の雑誌『太陽』に見られるか、つまり後世に伝播していたのかを確認した。その一方で『日本国語大辞典』の表記欄や用例を参考とし、読本以前の用例が見られないか、すなわち読本で発生した「あて字」であったのかを確認した。今年度はさらに読本で発生したと考えられる「あて字」が、白話語彙(白話語彙とみなされているものを含む)由来であることを確認するために、『唐話用例辞典』を用いて調査を行った。その結果、白話語彙に由来し、読本で確立し、後世へと伝播していった「あて字」が確かに存在していることが判明した。このことを前年度の研究成果を踏まえて、論文にまとめて発表した。 それらの研究の結果、今度は白話語彙由来の「あて字」はどの程度一般に浸透していたのかということが問題になった。そのことを検証するためにはまず白話語彙の辞書から、白話語彙に対応する日本語での意味説明の部分を抽出する必要がある。その意味で使われる語に今度は白話語彙で用いられる漢字を「あてる」ことによって、「あて字」が成立したのではないかと考えられるからである。例えば「光景」という白話語彙の意味説明に「ありさま」とあった場合、今度は「ありさま」という語を漢字表記する際に、「光景」とあてられて、「光景(ありさま)」という「あて字」が成立したのではないかということである。本年度はまず『唐話辞書類集』から、「あて字」の由来となりそうな二字漢語を拾い上げ、電子データを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、前年度までに「あて字」の発生と伝播に関するデータベースの構築を行う予定であった。データベースの構築に関してはこれまで試行錯誤を重ねてきたが、やはり現在のところコーパス化が行われていない読本や唐話辞書を中心に据えた方が良いという結論に至り、仕様を見直すことにした。そのためデータベースの構築は次年度へ持ち越すこととなった。このように遅れはあるものの、研究自体は段階を踏んで順調に進んでいるので、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
実際に唐話辞書における白話語彙の意味説明の部分の用例を集めてみたところ、同じ語であっても異なる意味で説明されていることがあった。その中で最も一般的な解釈の意味の語を表記する際に、白話語彙の漢字表記が用いられたものと考えられる。「あて字」は白話語彙の解釈の問題にも関係しているのである。データベース作成においては、これまでの調査と同様に、CHJや『日本国語大辞典』、『唐話用例辞典』、『魁本大字類苑』を用いるが、作成を通じてそのことについても検証し、論文としてまとめたい。むろんデータベースについては、今後の近世近代の表記研究に資するように構築していきたい。
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