研究課題/領域番号 |
18K12962
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大妻女子大学 (2022) 公益財団法人京都服飾文化研究財団 (2018-2021) |
研究代表者 |
小形 道正 大妻女子大学, 家政学部, 専任講師 (90778143)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2018年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 着物 / 和服 / 社会学 / 戦後日本 / ファッション |
研究実績の概要 |
本研究では戦後日本社会における和服ないし着物の具体的な形象の変化とともに、この変遷が人間と衣服の関係性をめぐる理論的な意味について考えることを目的としている。本年度は、『Fashion Talks...』vol.14にて論文「非日常化する着物と衣服を買うこと――1960年代から1980年代(下)」を発表した。前回の1960年代から70年代前半に引き続き、今回は70年代後半から80年代の着物を中心に分析を行った。本論文では1970年代後半から80年代の着物が生産数を減少させるなか、販売額は反比例するように増加していった。そこでは人間国宝・重要無形文化財の着物、デザイナーやブランドの着物、博物館や美術館の所蔵作品を参照ないし再現した着物などの商品がみられた。そこではもはや広告も女性の幸福を謳うのではなく、衣桁に美しく掛けられた、鑑賞される「芸術作品としての着物」の形象である。このようにして、1960年代から80年代の日本社会のなかで、着物の形象は「盛装・正装としての着物」から「芸術作品としての着物」へと変貌を遂げた。けれども、両者は着物を買うこと、持つことによって結びついていた。多くの人びとにとって着物を買えることは幸福であり、反対に、買えないことは不幸とされた。また、みずからの経験だけではなく、他者との思い出や記憶の着物を持っていることが数多く語られた。購入と所有。それがこの時代の着物と人びととの根源的な関係性であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実証的な着物の変遷については、まず1950年代にみられる「生活着としての着物」については日本語ならび英語の論文にて成果を得ることができた。また1960年代から80年代の「盛装・正装としての着物」ならびに「芸術作品としての着物」についても論文として発表することができた。しかしながら、covid-19の影響などもあり、1990年代以降の着物についていまだ十分に調査・分析が進んでいるとはいえないため、主にこちらに力を入れていきたいと思う。一方、前年度成果を発表することができた、理論的な衣服と人間の関係性についても、引き続き思索を深めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2つの方向性からアプローチを試みている。今後の研究については、まずはとくに次の区分である1990年代から現在までの着物の形象について析出を試みたい。当時の新聞記事や雑誌記事、ならびに繊維関係の統計資料について国立国会図書館をはじめとする機関にて渉猟しつつ、論文化できるよう努める。また、それを踏まえて、1990年代から現在の人間と衣服の理論的な関係性、すなわち借りることにおける意味について明らかにしたい。そして、この本研究の全体像となりうる人間と衣服の関係性をめぐる重要な理論的課題については、より精度を高めていくために、社会学や哲学、美学等の理論的著作を精読しつつ関連性を引き続き探っていく。
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