研究課題/領域番号 |
18K13054
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 長崎大学 (2019-2023) 九州大学 (2018) |
研究代表者 |
榎 景子 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60813300)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 「包括的な教育機会」保障論 / 義務教育 / ウェルビーイング / 米国 / 場を基盤とした改革 / ハーレム・チルドレンズゾーン / 包括的支援 / 教育政策 / プロミス・ネイバーフッドイニシアチブ / 都市再開発 / ニューヨーク市 / 場所を基盤とした教育改革 / 教育と福祉の連携 / ジェントリフィケーション / 学校再編 / 住宅政策 / 都市再生 / 政策連動 / 包括的な教育機会保障 |
研究実績の概要 |
本年度は、最終年度として、前年度までに収集したデータの解析をもとに論文化し、学会発表を行った。 米国では、人種・貧困を背景とした学力格差是正アプローチにおいて、学校改善を最良の選択肢とする立場と、学校改善の前に医療・福祉等の問題対応こそ重視する立場とで論争されてきた。だが近年、この対立構図自体の問い直しが意識され、新たな動向が生まれている。本研究で注目したのは、医療や福祉等のサービスを教育機会均等に不可欠な資源として含めることを提案した「包括的な教育機会」保障論と、地域での領域横断型協働実践の展開である。これらの動向の調査分析から、次の点を明らかにした。 第一に、上記動向はウェルビーイング一般の保障を目指すにもかかわらず、義務教育段階の教育達成を基軸に展開していたことである。これは教育が市民・社会形成に深く関わるために社会的関心事になりやすく、ゆえに包括的サービス保障の突破口になりうることを示している。第二に、上記米国の理論と実践は、わが国で福祉的役割まで担ってきた義務教育制度の再評価にもつながる動向といえる。ただし、米国では追加の資源投入が前提とされていることから、我が国の過少投資を問い直す動きとも言える。第三に、権利保障を個人的次元で考えるのではなく、地域・社会づくりに結びついてこそ果たしうるとの発想がみられたことである。権利が個人に「与えられる」という慈恵的枠組を超えて、子どもや子どもを取り巻く大人一人ひとりの教育への向き合い方が変わってこそ、権利保障は実質化しうると考えられていた点が重要である。第四に、今後の課題として、慈恵的枠組を乗り越えたとしても、果たして真に<善き生>の保障につながる制度となりうるかは、さらなる検討が必要であることを指摘した。 以上の成果は、査読を経て『日本教育制度学会創立30周年記念誌』に掲載され、また学会シンポジウムにて学界に問うことができた。
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