研究課題/領域番号 |
18K13281
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 東京未来大学 |
研究代表者 |
埴田 健司 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 准教授 (90757535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 風評被害 / 原発事故 / 福島県産農作物 / 罹患回避 / 行動免疫システム / 根本的社会的動機 / 購買意図 / 二過程理論 / リスク認知 / 新型コロナウィルス感染症 / 感染予防行動 / 潜在的態度 / 罹患回避目標 / 顕在的態度 / 共通内集団 / 潜在的社会的認知 / 進化社会心理学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、福島第一原子力発電所事故(以下、原発事故)に伴って生じた、福島県産食品等に対する風評被害の維持および抑止に関わる心理メカニズムやプロセスを、潜在的社会的認知および進化社会心理学的なアプローチから検討することが目的である。 令和4年度においては、まず、福島県産農作物の購買意図やそれらに影響する要因を検討するべく実施した前年度の研究成果を、日本社会心理学会第63回大会にて公表した(発表題目:福島県産農作物の購買意図と関連する心理要因は改善したか?―原発事故11年後における検討―)。主に、1)放射線不安等、購買意図への影響要因は原発事故2年後の2013年時点と比べ改善が見られるものの、福島県産農作物が未だ忌避されている可能性があること、2)感染症脅威が顕現的な状況では、感染症を避けようとする心理メカニズム(行動免疫システム)の働きによって福島県産農作物の購買意図が低下しやすいことを報告した。 本研究課題ではこれまでに、進化的に獲得されたと考えられている行動免疫システムが農作物を含む福島県産食品に対する態度に影響することを複数の実験・調査で検討してきたが、進化的に獲得された他の動機等の影響は未検討であったため、この点に関する調査研究も実施した。具体的には、根本的社会的動機(自己保護、罹患回避、所属、地位獲得、性愛関係追求および維持、血縁者保護)との関連を検討し、福島県産農作物への態度に対して罹患回避動機は負の影響を持っていたが、所属動機や血縁保護動機は正の影響を持つことが見いだされた。加えて、上記の動機は偏見・差別との関連が先行研究によって示されていることから、性的マイノリティに対する態度との関連も検討した。その結果、性的マイノリティへの態度に対して所属動機が正の影響を、罹患回避、地位獲得、性愛関係追求・維持の動機が負の影響を持つことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、福島県産食品の風評被害に関して、A)その維持について、①潜在的社会的認知、②進化社会心理学のアプローチから検討すること、また、B)その抑止についても、①潜在的社会的認知、②進化社会心理学のアプローチから検討する、4つの研究実施計画を立てていた。このうち、令和4年度までに、Aの①および②、Bの②については、調査あるいは実験に基づく研究を実施し、一定の成果が得られているものの、当初の目標・目的を達するためには追加的な研究の実施が必要である。また、上記Bの①については、研究実施準備を進めている段階であり、現在までのところ実施には至っていない。また、令和4年度に実施した研究は、その成果を公表できておらず、それ以前に実施した研究の成果も十分に公表できていない。現状は当初計画の80%程度の進捗状況であるため、総合的には「やや遅れている」と判断される。再度期間を延長して、当初の研究目的・計画を達する実証研究の実施および研究成果の公表を行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、福島県産食品の風評被害の維持と抑止のそれぞれを、潜在的社会的認知、進化社会心理学の2つのアプローチから検討するものであるが、後者のアプローチに基づく風評被害の維持・抑止については、これまでに一定の研究成果が得られている。一方で、前者(潜在的社会的認知)のアプローチに基づく研究の進捗は遅れており、その中でも風評被害の抑止に係る研究が特に遅れている状況であるため、今後はこの点に注力して研究を推進させる。これまでに実施した研究により、福島県産食品と安全性の結びつきの弱さが購買意図を低下させている可能性が示唆されている。安全性との結びつきを強める介入方略を検討することを含め、風評被害抑止に関わる潜在的認知過程を明らかにすることを目指す。 すでに実施済みの研究についても、その成果を公表していないものがある。新型コロナウィルス感染症の影響により、特に海外で開催される国際会議には参加しづらい状況が続いていたが、その状況も緩和しつつある。これまでに未公表の研究成果については、国内学会に加え、国際会議においても発表し、学術誌論文としても投稿して採択されることを目指す。
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