研究課題
若手研究
本研究では、正解確信度の評定を含む表情認知課題を用いて測定したメタ認知指標や課題中の顔の各領域における注視点数と妄想の重症度との関連を検証した。さらに、最終年度には、本研究のメタ認知指標を用いて、統合失調症患者のメタ認知の低さを健常成人と比較検証した。対象は統合失調症患者44名(Sc群)と健常成人15名(HC群)で、両群に簡易知能検査,抑うつの評価,表情認知課題を施行し,Sc群には精神症状の評価(PANSS-6)を施行した.表情認知課題では顔写真が示す感情の回答とその回答が正解だと思う確信度(0-100%)の評定を求め、"正解or不正解"と"確信度"との順位相関をメタ認知的判断の指標として算出した.課題中は眼球運動を計測し,顔の各パーツに設定した関心領域の注視点数と停留時間の平均を算出した.Sc群を対象とした解析では、PANSS-6の"妄想"項目得点を目的変数とした重回帰分析にて、抑うつ、口領域の注視点数に加えてメタ認知指標が有意な説明変数として抽出された。さらに、Sc群をPANSSの妄想項目得点が4点以上の妄想が重度の群(HD-Sc群),3点以下の妄想が軽度の群(LD-Sc群)に分類し、HC群を含めた3群間のメタ認知指標の違いを年齢や簡易知能検査の得点などの基本属性を共変量とした共分散分析にて検証した結果、Gamma相関はHD-Sc群がLD-Sc群とHC群よりも 有意に低かった。本研究の結果から,今回用いたメタ認知指標が課題中の情報取集の不全とともに統合失調症患者における妄想の重症度と関連すること、健常成人との比較では妄想が重度な者にはメタ認知的判断の低下がみられた一方で、妄想が軽度な者のメタ認知的判断は健常成人との差がないことが示された。以上の結果から、本研究で用いた計測法をメタ認知の評価に活用できる可能性が示唆された。
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