研究実績の概要 |
2023年度は(1)任意次元のGorenstein特異点をもつ偏極トーリック・ファノ多様体において, 漸近的チャウ半安定性がDing準安定性を導くこと, (2)非特異トーリック・ファノ多様体において相対的Ding安定性の判定で重要な役割を担う不変量(満渕定数)の加法性(直積公式)をそれぞれ証明した.またこれらの内容はオープンアクセスのジャーナルMathematics, 11(19), 4114 (DOI: 10.3390/math11194114)において掲載された.特に(2)の公式については,自身の結果Eur. J. Math(2023) 9(29)(DOI: 10.1007/s40879-023-00617-0)と組み合わせることで、可算無限個の「相対Ding安定性と相対K-安定性の違いを示す例」の構成に成功した.これは上述のEur. J. Mathの論文において,私自身が独自に考案した「カラビ夢構造を相対K安定性の判定に応用する」という着眼点が大きな鍵となっている.実際その着眼点を別の角度から反映した研究結果の1つとして,大阪大学の藤田健人氏との共同研究で発表した"Strong Calabi dream Bott manifolds" Annali dell' Universita di Ferra (2024), (DOI: 10.1007/s11565-023-00484-3)がある.同論文では「どのようなトーラス不変な因子に沿ってもスロープ半安定なBott多様体は射影直線の直積に限る」ことを交叉数を用いた幾何学的不変量の計算を通して証明している.またこの主張と等価かつ独立な問題として,「任意のトーラス不変な因子に対して二木不変量が常に消滅するBott多様体の分類問題」を小野肇氏,佐野友二氏と共に解決し論文結果としてまとめた(arXiv:2305.05924)
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