研究課題/領域番号 |
18K13443
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
曽我 幸平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80620559)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | level-set method / 線形輸送方程式 / Hamilton-Jacobi方程式 / 特性曲線の方法 / 粘性解 / 弱KAM理論 / Tonelliの変分法 / Navier-Stokes方程式 / 二相問題 / 弱解 / 非圧縮性Navier-Stokes方程式 / Leray-Hopfの弱解 / 差分法 / 時間周期解 / 安定性解析・分岐解析 / 応用解析 / 力学系 / 流体力学 |
研究実績の概要 |
流体力学における二相問題に現れるHamilton-Jacobi方程式の数学解析を行なった。二相流体の自由境界の時間発展を記述する1つの方法として、線形輸送方程式によるlevel-set methodがよく知られている。この方法では、自由境界が線形輸送方程式の解(level-set関数という)の0-levelとして得られる。自由境界の幾何学的な量(単位法線ベクトル場、平均曲率など)もlevel-set関数から得られる。数値流体力学ではlevel-set関数を数値計算するが、例えばlevel-set関数の勾配ベクトルの大きさが0-level上で保存されない、などの理由により技術的な困難が生じることがある。そこで線形輸送方程式に非線形の補正項を加える方法が知られている。当該年度の研究では、非線形補正された輸送方程式を一階完全非線形なHamilton-Jacobi方程式の枠組みで解析した。
非線形補正された輸送方程式に対する全空間の初期値問題を粘性解のクラスで解くという先行研究がある。先行結果では、粘性解の0-levelは補正する前の0-levelに一致しているものの、解の連続性しか分からないため幾何学的な量を考察することは難しい。本研究では、有界領域の問題を古典解および粘性解のクラスで考察した。主要な結果として、補正前の0-levelの小さい近傍において、補正された輸送方程式が時間大域的な古典解を持ちかつその古典解の0-levelは補正前のものに一致することを示した。さらに、解の勾配ベクトルの大きさが0-level上で保存されることも示した。一階完全非線形なHamilton-Jacobi方程式の古典解を十分小さい時間区間で構成することは一般に可能であるが、これを大域的に延長することは非自明である。この結果は、数値流体力学の手法の数学的裏付けでもあり、分野横断的な意義を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究内容は、流体力学におけるHamilton力学系およびHamilton-Jacobi方程式の手法の応用という独創的なものであり、本研究計画の目的に沿った意義のある結果が得られた。したがって研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において、まず最初に前述の研究結果に関する論文を完成させる。
前述の研究において、空間局所的古典解の構成については特性曲線の方法が鍵となるが、全く別の手法で構成される空間大域的粘性解との局所的な関係が分かっていない。この点を解明することが今後の課題となる。これに関連して、特性曲線の方法の直接的な一般化によって得られるHamilton-Jacobi方程式のvariational solutionと呼ばれる解クラスについても考察する。上で述べた補正された輸送方程式は、未知関数自身にも依存するHamilton-Jacobi方程式である。このようなタイプの方程式に対するvariational solutionの研究は研究代表者が知る限り行われていない。今後の研究において、variational solutionに関する基礎研究も開始する。
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