研究課題/領域番号 |
18K13547
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪市立大学 (2021) 立命館大学 (2018-2020) |
研究代表者 |
西中 崇博 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20773021)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 弦理論 / 素粒子論 / 共形場理論 / 超対称性 / 双対性 / 超弦理論 |
研究実績の概要 |
本研究課題ではこれまで主に、(A_1,D_{2n}) タイプのアルジレス・ダグラス(AD)理論をゲージ化した理論のS双対性を、その分配関数とカイラル代数の計算により調べてきた。これまで (A_1, D_{2n-1}) ではなく (A_1, D_{2n}) タイプのアルジレス・ダグラス理論に焦点を絞っていた理由は、前者の場合にはAGT対応による分配関数の計算法が不明であり、特に、対応する2次元リウビル理論のイレギュラー状態が特定されていなかったためである。このような「(A_1,D_{2n-1}) タイプのAD理論に対応するイレギュラー状態」を特定することは、10年以上もの間、未解決問題として残されていた。 このような状況の中、私と共同研究者は2023年度に、すべての (A_1, D_{2n-1}) タイプの半整数ランクのAD理論に対応するイレギュラー状態が満たすべき連立微分方程式を発見し、この未解決問題の解決に大きな貢献を果たした。このうち (A_1, D_3) タイプの場合には、本研究課題ですでに計算した (A_1, A_3) 理論の結果と見事に一致することを確認し、また (A_1, D_5) タイプの場合には昨年発表された別グループの独立な仕事の結果と無矛盾であることを示した。n>3 の場合については、我々の結果は完全に新しい微分方程式によるヴィラソロ代数の表現を与えていると期待され、純粋にヴィラソロ代数の表現論の観点からも非常に興味深い。 この結果を用いることで、昨年度に報告した (A_2, A_5) タイプの理論のS双対性について、より詳細な議論が可能になると期待される。特に昨年度の時点ではゼロとしていた relevant deformation を非ゼロにした場合でも、S双対性変換を調べることができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A_1, D_{2n-1}) タイプのAD理論に付随するイレギュラー状態の特定は、本研究課題の申請時から気にしていた問題であるが、申請時にはその解決に至るヒントを全く持っていなかったため、補助期間中に解決できるかどうか確信はなかった。しかしながら、ここ数年の本研究課題の進展や、同時に進行している他の研究課題の結果との相互作用により、当初は想像もしていなかった大きな進展があり、結果として全ての (A_1, D_{2n-1}) タイプのAD理論の分配関数の計算を(原理的には)可能にする連立微分方程式を得ることができた。この成果は、業界が長年気にしていた未解決問題に明快な解を与える大きな進展であり、また本研究課題の後半にふさわしい画期的な成果である。このため、この点だけを見れば、2023年度の本研究課題は当初の計画以上に進展している。 一方で、2022年度の報告書に記した「SU(3)ゲージ理論への拡張」に関する論文を未だ発表できずにいることは、本研究課題全体の遂行の進度が速かったわけではないことを意味する。 以上を踏まえて総合的に考えると「おおむね順調に進展している」とするのが妥当であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは2023年度に発表できなかった「SU(3)ゲージ理論への拡張」に関する論文を発表する。また、2023年度に得られた (A_1,D_{2n-1})理論に付随するイレギュラー状態に関する情報をもとに、(A_2, A_5) 理論のS双対性を relevant deformation がある場合に再考する。 一方で、カイラル代数の手法に関しては、4次元N=2理論を3次元にコンパクト化して得られる3次元N=4理論を考え、それに付随するカイラル代数を、近年開発された Costello-Gaiotto の手法で調べる。この手法で得られたカイラル代数と、4次元N=2理論から直接得られるカイラル代数は、4次元が通常のゲージ理論の場合には一致するが、4次元がAD理論の場合には微妙に異なることが知られている。その微妙な差異から、4次元のS双対性に関する情報を読み取れるかどうかを明らかにする。
|