研究課題/領域番号 |
18K13908
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
勝亦 達夫 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (60789709)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2018年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 近代蚕室 / 蚕書 / 養蚕 / 構成要素 / 技術伝播 / 模範蚕室 / 仕組み / 火炉 / 養蚕建築 / 蚕室 / 近代 / 地域性 / 長野県 |
研究実績の概要 |
令和2年度の調査で、長野県上田市上塩尻地域を絞り込み、令和3年度はエリア全体の蚕室の分布や古地図(絵図)が発見でき、明治期の養蚕のための「まちづくり」として近代蚕室が建築され町が形成されたプロセスが明らかになった。令和4年には、旧佐藤宗家の専用蚕室(一号・二号)の復原的考察から蚕室の建築的特徴を把握し、養蚕法が把握されている他地域の蚕室との比較をふまえて、当地域の養蚕法との関係を検証した。その結果、二棟の専用蚕室は明治23 年(1890)の建築当初から、気抜きのための総櫓や埋薪と呼ばれる火炉など、近代蚕室が推奨する建築的要素を採用していたことを把握した。南北面の開口による通風や総櫓の越屋根を備えた清涼育にもとづく蚕室の造りを基本としつつ、温暖育に不可欠な常設の火炉や天井を設けていた。建設年代と養蚕法からは折衷育の先駆けとして位置けられ、その展開においてはこの地域で普及していた「半温暖飼育」という地域性にもとづいて専用蚕室が開発された可能性を示した。 このように、地域の中で技術伝播の中心的な役割を担っていた旧佐藤宗家の意義を伝えるべく、2022年10月29日には保存活用に向けた有志と共に地域住民向けに令和4年度「藤本蚕業資源活用事業」佐藤家住宅・旧佐藤宗家/藤本蚕業歴史館見学会を開催した。 これまでの調査、研究で明らかになったことや地域の意向として重要性などを説明し、さらなる活用に向けた地域との連携を促した。こうした成果や地域資源を活用したまちづくり、住民の参画の成果を台湾の研究交流会で発表する機会を得て、中華医事科技大学で開催された研究交流会において発表し、意見交換を行った。研究内容について共有しながら、調査‐研究‐活用の一貫した取り組みを地域に還元するプロセスについても関心が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための自粛が緩和されてきたおかげで、これまでできなった調査や取組みが再開できた。地域住民と相対しての調査や成果発表がしづらかったが、10月~12月にはやっと対面して成果報告を行うことができた。また、これにより新たな文献資料/史料の発見につながり、実態の解明に大きく進むことができた。この成果について、日本建築学会北陸支部、日本建築学会全国大会での発表に加え、国際学会/研究会での発表機会を得て、台湾にて発表・報告できた。 これらの成果を論文(査読付)として発表するための準備を進めているが、新たな資料や史料の分析からわかったことがでてきたため、その点を加筆しており提出が伸びてしまっているが、調査の再開以降飛躍的に調査・研究活動を進められており、間もなく本テーマについては完了できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
建築的要素に着目し、蚕書の影響の実態や地域的な特徴を、旧佐藤宗家という具体的な対象から明らかにすることを行ってきた。今までの研究では見えてこなかった、個々の建築遺構に対する技術伝播の影響の実態を知ることができた。まずはこの内容を、査読論文としてまとめ発表することで成果としたい。 さらに、この成果を以て本調査の目標でもある地域への還元、まちづくり提案として地域勉強会の開催によって、貴重な建築遺構を保存活用するまちづくりの機運を、所有者の方から起こすことができた。成果報告資料を所有者や行政等へも提出をしたが、周辺住民へも機運の醸成を益々図りたい。さらに、研究として本調査によって発見された手つかずの史料の解読、地域内への伝播や他地域の模範的養蚕地域との交流も見られた。これらを丁寧に読み解くことで、近代の技術伝播とその影響で発展した町の形成プロセスを明らかにできると考えられる。これらについては、次の研究テーマとしたい。
|