研究課題/領域番号 |
18K14196
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 聡一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (40802913)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2019-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2018年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | シングレットフィッション / 励起状態 / 励起子拡散 / 量子ダイナミクス / 量子化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、π共役化合物の一部において観測されている一重項分裂(Singlet Fission, SF)およびこれの逆過程である三重項三重項消滅(Triplet-Triplet Annihilation, TTA)について、両過程を制御することによって期待される、新規な光・スピン機能を持つ材料の設計を目指している。 初年度では、特に占有および非占有π軌道間の重なりに起因する電子相互作用がこれらのダイナミクスへ与える影響について明らかにするため、理論計算によってこれを検討した。計算を単純化するため、有機結晶中の二分子を取り出したモデルを想定した。種々のパラメーターによる影響を評価するため、複数種の電子相互作用をそれぞれ独立に変化させ、理論計算を行った。計算の結果、これまでSFが効率的に進むことがよく知られている、SF発熱的で小さな電子相互作用を持つ場合に加えて、新たにSF吸熱的でも大きな電子相互作用を持つ場合でもSFが有利に進むことが示された。このとき、特に占有-非占有軌道の間の電子相互作用が強い場合にこの傾向が顕著に見られた。この結果は、電子状態間のエネルギー準位バランスが発熱的か吸熱的かによって大きく収率が異なるとした従来の観測結果とはまた異なった見方を与える。すなわち、従来の実験による観測結果はほとんどが弱い電子相互作用系に偏っており、今回の理論計算で考慮したような強い電子相互作用系では全く状況が異なっていることを示唆している。特に、エネルギー準位がSFに不利でも、うまく電子相互作用を設計してやることで効率的にSFが起こせると期待できる。これは強い電子相互作用を用いた新しいSF物質の可能性を示しており、これまでSF吸熱的であまり注目されてこなかった多くの分子での実験によるSF観測が期待される。
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