研究課題
若手研究
沿岸海水に栄養塩を添加することで、難分解性溶存態有機炭素の細菌分解が促進されるのかを実験的に検証した。有明海の海水に栄養塩を添加して150日間の培養を行った結果、栄養塩添加による溶存態有機炭素の分解量の増加はみられなかった。一方で、栄養塩添加系でのみタンパク質 (様物質) の顕著な分解がみられた。本実験において有機炭素分解量に有意な増加が見られなかったのは、無添加系においてタンパク質以外の有機物が添加系におけるタンパク質分解量と炭素量として同じくらい分解されたためであると考えられる。これらの結果より、溶存態有機物を構成する成分によって、栄養塩添加による細菌分解への影響が異なることが示唆された。
海洋生物を介して海域に貯留される炭素は、「ブルーカーボン」と呼ばれ、陸上植物の貯留する炭素に匹敵するかそれ以上であると試算されており、COP21で合意されたパリ協定においてもブルーカーボンは温室効果ガスの吸収、貯蔵庫の候補として位置付けられている。本研究では、沿岸域の溶存態有機炭素の細菌分解・生成に対する栄養塩添加の影響の一端を明らかにすることができた。これは、海洋細菌群集によるブルーカーボンの生成メカニズムの解明に資する成果であり、ブルーカーボンの生成による炭素隔離能力の強化を図る上で重要な情報であると考えられる。
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