研究実績の概要 |
申請者らはこれまでに犬尿路上皮癌(UCC)においてBRAF遺伝子変異がERK/MAPKの活性化を介してCOX2発現を誘導する可能性を見出し、当該変異はCOX2を介した炎症環境の誘導を通じて腫瘍の悪性化に関与する新たなタイプのがん遺伝子ではないかと仮説を立てた。 そのため本年度はUCC症例検体を用いてCOX1/2,CD3, CD20, MPO, IBA-1, CD8, Foxp3, CD204に関する免疫染色を行い、UCC内における炎症環境と腫瘍の悪性化との関連、並びにCOX発現と炎症環境の相関を調べた。その結果、UCCのステージ進行と腫瘍内の抑制性T細胞浸潤には正の相関があり、またM2型マクロファージ浸潤は負の予後因子であった。このことからUCC進行には癌促進性の炎症環境構築が深く関わっていることが示唆された。またCOX1発現とM2マクロファージ浸潤には正の相関があり、COX2発現と腫瘍内のCD8T細胞及びM2マクロファージ浸潤にはそれぞれ正及び負の相関が認められた。さらに手術前のネオアジュバントNSAIDs治療は腫瘍内に浸潤するCD3細胞、特にCD8細胞の数を増加させた。 以上より、UCCの進行に癌促進性炎症環境の構築は非常に重要であり、特にCOX2がその中心的な役割を担っていることが示唆された。今後はBRAF変異並びにMAPK経路の活性度とこれら腫瘍微小環境との関連を解明していく予定である。
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