研究課題
若手研究
染色体分配において、細胞核を構成する核膜と核膜孔は一度崩壊した後、それらが再形成される。その過程において、核膜孔複合体構成因子であるELYSタンパク質はヌクレオソームに結合し、核膜孔複合体構成因子をリクルートすることで、核膜孔再形成の起点を形成する。しかし、ELYSがどのようにヌクレオソームを認識し結合するのか、その様式は明らかでない。そこで本研究は、ELYS-ヌクレオソーム複合体を試験管内で再構成し、核膜孔複合体構成因子ELYSによるヌクレオソームの認識機構を構造生物学的解析により明らかにすることを目的とした。ELYSは巨大分子であるため、全長での精製は困難であることが予想された。そこで、ヌクレオソームとの結合領域であるELYSのC末端領域(以下ELYSC)をリコンビナントタンパク質として精製した。ELYSCをヌクレオソームと混合し、ELYSC-ヌクレオソーム複合体をスクロース密度勾配遠心法と架橋剤による化学架橋を組み合わせたGrafix法により精製した。精製したELYSC-ヌクレオソーム複合体をクライオ電子顕微鏡により撮影し、得られた画像の単粒子解析を行った。その結果、ELYSC-ヌクレオソーム複合体の立体構造を4.3 オングストロームの分解能で決定することに成功した。解析の結果、ELYSはヌクレオソームの表面に存在する酸性領域に結合することが明らかになった。クロスリンキング質量分析による解析を行った結果、ELYSはヌクレオソームの酸性領域を構成するヒストンH2AおよびH2Bの残基と相互作用することがわかった。以上の結果より、ELYSはヌクレオソームの酸性領域を足場として結合し、核膜孔複合体構成因子をクロマチン上にリクルートするというモデルが考えられた。本研究成果をまとめ、Communications Biology誌に筆頭著者として発表した。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Communications Biology
巻: 印刷中
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/kurumizakalab/