研究課題
若手研究
本研究の目的は、大動脈周囲線維芽細胞に由来する細胞外マトリックス(ECM)成分の補充により弾性線維構築を促進させ、大動脈瘤形成抑制や破裂防止などの効果が得られるか検討し大動脈瘤に対する薬物治療戦略を開発することである。研究代表者は線維芽細胞特異的ERK5欠損マウス(fKO)を作製し、線維芽細胞由来ERK5がECM制御に与える影響を各種マウスモデルを用いて検討した。①創傷治癒モデルにおいてfKOでは治癒の遅延が認められた。②angiotensin II誘発心臓線維化はfKOにおいて促進されECM関連遺伝子発現は上昇傾向にあった。③担癌マウスモデルにおいてfKOでは癌組織の増大を認め、癌ゲノムビッグデータ(TCGA)を用いて癌関連線維芽細胞マーカー発現やECM関連遺伝子発現は大腸癌患者の生存率を低下させることを見出した。さらに胎児由来線維芽細胞(MEF)を用いて、ERK5ノックダウンにより低酸素刺激によるHIF-1α活性化が促進されることを見出した。以上の研究成果より、当初の予想と反して線維芽細胞由来ERK5はECM発現や分泌を抑制する作用を有する可能性が考えられる。これまでに、研究代表者の報告も含めHIF-1αはECM発現を促進させることや線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を制御することが報告されており線維化関連疾患において中心的な役割を果たしていることが知られている。今回研究代表者は、生体内においてERK5がECM代謝制御において重要な役割を果たすHIF-1αを負に制御することを見出した。したがって、大動脈瘤においても線維芽細胞由来ERK5は弾性線維構築に対し重要な役割を果たしている可能性が考えられる。現在、大動脈瘤モデルを用いてその役割を検討中であり、その成果によって全く新たな大動脈瘤形成・破裂予防の薬物療法戦略が提唱できる可能性がある。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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