研究課題
若手研究
難治疾患である X 連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1)の治療法の確立を目指して、疾患原因である遺伝子変異を、CRISPR/Cas9とウイルスベクターを組み合わせて正確で高効率に修復する方法を検討した。SCID-X1の原因遺伝子であるIL2RGを標的とするCRISPR発現カセットと、IL2RGの全エクソンを含む正常配列、およびネオマイシン耐性遺伝子が一つのヘルパー依存型アデノウイルスベクター(HDAdV)に集約された“all-in-one vector”を用いて検討を行った。1.all-in-one vectorと、その比較対象群である①CRISPRタンパク質とガイドRNA複合体(RNP)+ネオマイシン耐性遺伝子を含むIL2R2正常配列(修復用ドナー配列)とアデノ随伴ウイルス、②RNPとネオマイシン耐性遺伝子を含むIL2RG正常配列とHDAdVをそれぞれK562細胞株に導入した。遺伝子修復効率を調べるために修復用ドナー配列挿入部位とK562細胞染色体とのジャンクション部位やネオマイシン耐性遺伝子上にプライマーを設計しPCRを行った。その結果、all-in-one ベクターを用いたときはRNP+HDAdVより高い効率で遺伝子修復されている傾向にあった。2.実際ex vivo治療で用いられるヒト造血幹前駆細胞にall-in-oneを導入した後、メチルセルロースで細胞毒性を調べた。その結果修復実験を行っていない実験群と比べてコロニー数や種類の差はなく、細胞毒性の低い実験条件を決定した。