研究課題
若手研究
我々はこれまで、レニン・アンジオテンシン系が脊髄内において疼痛情報の伝達・調節に関与していることを明らかにしてきた。本研究では、これまでの研究成果を基に神経障害性疼痛に対するアンジオテンシン (Ang) (1-7) の鎮痛効果並びにその作用機序の解明を目的とし、ストレプトゾトシン (STZ) 誘発性1型糖尿病マウスを用いて検討を行った。STZ投与後14日目において疼痛閾値の変化をvon Frey testおよびPlantar testにより評価したところ、STZマウスでは対照群と比較して顕著な疼痛閾値の低下、すなわち接触性痛覚過敏および熱性痛覚過敏が認められた。これら痛覚過敏に対するAng (1-7) 有効性を検討するためAng (1-7) を脊髄クモ膜下腔内に単回投与すると、3-30 pmolの用量において抗痛覚過敏効果を示した。また、Ang (1-7) による鎮痛効果はMas受容体遮断薬であるA779併用投与により消失したことから、Ang (1-7) はMas受容体を介して抗痛覚過敏効果を示すことが明らかとなった。加えて、ウエスタンブロット法を用いて脊髄後角におけるMAPKの発現変化を測定したところ、STZマウスの脊髄後角ではリン酸化p38 MAPK、ERK1/2およびJNKの発現量が増加していた。そのうちp38 MAPKのリン酸化のみAng (1-7) により抑制されることが明らかになった。従って、Ang (1-7) はMas受容体を介したp38 MAPKのリン酸化抑制に起因して神経障害性疼痛を抑制させる可能性が示唆された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Eur. J. Pain
巻: 23 号: 4 ページ: 739-749
10.1002/ejp.1341