研究課題
若手研究
先天性心疾患の外科治療では人工材料から作製された血管グラフトが使用されているが、多くの場合、小児患者が成長しても血管グラフトが成長しないために、術後に狭窄をきたし再手術が必要となる。このため、人工材料を使わずに細胞だけで作る、成長する可能性のある血管グラフトがあれば、小児用の血管グラフトとして理想的である。研究代表者らは、先行研究で、ラットの血管平滑筋細胞に圧力(静水圧)を加えることで、細胞骨格の形成や細胞外基質の分泌を促進し、細胞だけを用いて血管グラフトを作製することに成功している。本研究の目的は、圧力印加が細胞に与える影響を明らかにして、三次元立体組織構築に最適な圧力条件を見出し、臨床応用に向けてヒト由来細胞を用いた血管グラフトを作製することである。はじめに、本研究では、分娩時に得られたヒトの臍帯から、血管平滑筋細胞を安定して分離する方法を確立した。そして、これらの分離したヒト血管平滑筋細胞を用いた網羅的遺伝子解析を行い、静水圧で上昇する複数の遺伝子を同定した。これらの同定した遺伝子のうち、三次元立体組織構築に必要な細胞外基質の分解を抑制し、安定化する作用が報告されている分子を見出した。さらに上流シグナルを抑制することで、これらの静水圧に対する発現増加が抑制されることを確認した。今後は、同定した分子の上流シグナルに焦点を当て、その発現量が最適となる圧力環境を検討する予定である。これにより、血管グラフト作製に最適な圧力環境を同定できる見込みであり、最適な血管グラフトを動物への生体移植実験に用いる予定である。
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