研究課題
若手研究
潰瘍性大腸炎の病態は多彩で、その治療反応性も患者ごとで大きく異なる。治療への反応性の一部は、遺伝的に決まっている可能性があり、治療選択の上で重要な遺伝情報を探索することは、臨床的にも、そして新規治療の開発においても重要な検討である。本研究では、日本人潰瘍性大腸炎に最も相関が強いHLA領域に存在する遺伝子多型が、疾患にはリスクである一方で、むしろ手術率が低いことを明らかにした。また、治療で最も多く使われるメサラジン製剤に関連する遺伝的背景を明らかにし、副作用と関連する遺伝子多型のほか、副作用を予測するPolygenic Risk Scoreモデルを構築した。
本研究は、多彩な病態を示す潰瘍性大腸炎の治療戦略において、遺伝的背景を考慮することの重要性を示唆するものであり、将来の個別化医療における遺伝子情報の有用性を明らかにしている。現在、潰瘍性大腸炎の新規治療薬が次々と実用化されてきているが、それぞれの治療有効性は決して高いものではなく、効果がある薬剤を探しながら順に使用している流れであるが、遺伝情報を活用することで、その優先順位などを考慮し、より効率的かつ安全に治療を行うことが可能となる。また、効率的・安全な治療は、不必要な治療を回避することで医療経済的な効果があることから、本研究結果などをもとにあらたな治療モデルの構築につながる可能性がある。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Inflamm Bowel Dis
巻: - 号: 1 ページ: 21-31
10.1093/ibd/izab004