研究課題
若手研究
腸内細菌叢を構成しているF. nucleatumが発癌との関連性があることが報告され、マイクロサテライト不安定性(MSI)大腸癌でその発現頻度が有意に多いことが報告されている。日本人のMSI大腸癌の頻度が欧米人よりも低いとの報告が多いが、これらの解析結果は人種や地域差による大腸癌組織内のF. nucleatum陽性率や発現量の違いがMSIの頻度に影響を与えている可能性も示唆している。よって人種や地域差に関わらず腸内のF. nucleatumとMSIとの間に有意な相関がみられたことは、その発癌メカニズムを明らかにする上で興味深い研究成果であると思われる。
本研究は従来までF. nucleatum研究で用いられていない小さな大腸腫瘍とその周囲の正常粘膜の臨床検体をサンプルとする新たな試みである。その成果によりF. nucleatumが正常のヒト大腸粘膜や小さなポリープ内で腫瘍発生・増殖を促していることが示された場合、癌予防におけるF. nucleatumの重要性は高まると考えられる。また米国のコホート研究で食物繊維が豊富な食事がF. nucleatum陽性大腸癌のリスクを低下させるとの報告がなされたことで、F. nucleatumを標的とした大腸癌予防の現実味は増しており、本研究の動物実験の成果はヒトへの介入研究の礎の一つとなることが期待される。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
消化器・肝臓内科
巻: 4 ページ: 375-381
The Journal of Pathology
巻: 245 号: 4 ページ: 445-455
10.1002/path.5098