研究課題/領域番号 |
18K15928
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
冨田 雄介 熊本大学, 病院, 講師 (90648619)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害剤 / 肺癌 / T細胞 / 腸内細菌 / がん免疫療法 / 腫瘍免疫微小環境 / PDー1 / 腫瘍抗原 / COVID-19 / SARS-CoV-2 / PD-1 / PD-L1 / 腫瘍免疫 / 免疫療法 / 末梢血単核球細胞(PBMC) / T 細胞 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が、新規がん精巣抗原(LY6K, KIF20A, CDCA1)特異的T細胞に及ぼす影響と、抗腫瘍効果との関連解析を行うため、進行肺癌患者の免疫チェックポイント阻害剤治療開始前・後の末梢血単核球細胞検体の保存、症例集積を引き続き継続中である。得られた検体を用いてマルチパラメーター・フローサイトメトリーを用いたT細胞解析を進めている。当初、過去に申請者が同定した新規がん精巣抗原に特異的なT細胞に対して及ぼす影響と抗腫瘍効果との関連解析を行う予定としていたが、進行肺癌患者の末梢血中からは解析に必要な十分量の特異的T細胞を検出することができなかった。そのため、熊本大学呼吸器外科と共同研究を開始し、腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞が多い患者とDrebrin陰性T細胞が肺癌組織内に存在することを同定した。2019年に導入したStrata Quest を用いて腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞を定量解析を行い、術後生存期間、術後無増悪生存期間の関係解析を進め成果を研究論文として報告した(nt. J. Mol. Sci. 2022, 23(22), 13723: (IF=6.2))。 2020年から腸内細菌が腫瘍免疫活性化し能動免疫を促進する可能性に注目し解析を進め、その研究成果をCancer Immunology Research (IF =12)に2021年に報告した。これらの研究成果をもとに腸内細菌叢の遺伝子解析を進めており、腸内細菌とICIの治療効果、抗腫瘍免疫応答の増強に対する研究へ解析範囲を広げ、研究成果を研究論文として報告した(Oncoimmunology. 2022 May 27;11(1):2081010. (IF=7.72))。さらに、これらの研究成果応用しICI(腫瘍免疫抑制回避)と免疫活性化を誘導する腸内細菌(能動免疫)を併用するがん免疫療法の開発につなげるための研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、進行肺癌患者のICIと新規がん精巣抗原特異的T細胞の関係に注目し解析を開始した。進行肺癌患者における腫瘍特異的T細胞の検出が十分にできずT細胞プロファイリングは達成できていないが、多重蛍光免疫染色とStrata Quest を用いた腫瘍免疫微小環境定量解析を導入し研究成果を複数報告できている。患者末梢血検体からマルチパラメーター・フローサイトメトリー解析を行い、免疫サブセット解析結果を含めて4つの研究論文として報告することができた。予期せぬ事態としてCOVID-19パンデミックとなり、研究施設の制限・がん患者への診療制限が必要となり研究を進めることができなくなった。しかし、COVID-19パンデミック下で、申請者のT細胞免疫やHLAに関する免疫学に関する知識を生かし、医学の発展へ貢献するためにSARSCoV-2/ COVID-19と免疫システムに関する研究を新たに開始した。2報の研究成果をfirst author として報告することができた。研究成果を研究論文として複数報告できた。報告した論文はmost cited articleとして評価されている。さらに腸内細菌叢が能動免疫活性化に寄与する可能性に注目し、がん免疫療法(免疫逃避回避)の治療効果に与える影響に着目し、腸内細菌叢を修飾する整腸剤と免疫療法の効果に関する後方視的研究を開始し成果を報告した(Cancer Immunol Res;IF 12)。さらに2021年度はこの研究成果を応用し、腸内細菌叢とICI及び能動免疫との治療効果の関連に注目して解析を進め、研究成果は2022年度中に研究成果を報告できている(Oncoimmunology IF=7.72)。
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今後の研究の推進方策 |
多重蛍光免疫染色を用いた腫瘍免疫微小環境定量解析を施行中に、腫瘍浸潤T細胞の中にT細胞が抗原提示細胞と接着する際に発現する淡白であるDrebrinを発現するT細胞と発現していないT細胞が存在することを発見した。もともとDrebrinは癌や神経細胞に高発現する分子として知られているが、腫瘍浸潤T細胞のDrebrinの機能や臨床的意義は不明である。Strata Quest を用いて腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞の定量化を行い術後無増悪生存期間との関係を評価し、合わせてDrebrin陽性T細胞の機能解析をin vitroで行っていく。この研究成果を応用し、腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞、術後再発患者における免疫チェックポイント阻害剤の効果との関連解析を進めている。 腸内細菌叢が腫瘍に対する能動免疫を活性化する可能性に注目し、がん免疫療法の治療効果(免疫逃避回避)に及ぼす影響に着目し、腸内細菌叢を修飾する整腸剤と免疫療法の効果に関する後方視的研究を2020年に行い、その成果を報告している(Cancer Immunol Res. 2020)。この研究を発展させ、腸内細菌を標的とした(能動免疫活性化)治療とICI(免疫逃避回避)の併用による新規がん治療法の開発を目指し、前向き観察研究を進め、腸内細菌叢解析および免疫システムとの関係解明及び、新規治療戦略の開発を試みる。
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