研究課題
若手研究
本研究において、我々は単剤でACOの臨床的特徴を再現しうる薬剤として、植物パパイヤに由来するシステインプロテアーゼであるパパインに着目し、パパインをマウスに経気管的にエアロゾルで反復投与することで簡便にACOマウスモデルを作成できるかどうか検討した。ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)によるCOPDモデル、およびPBS投与群を対象として、Day 0, 7, 14, 21にパパイン50μgを反復投与したモデルとの比較検討を行った。各群の解析はday 25に行った。各モデルにおける呼吸メカニクスや肺気腫の程度について比較検討したところ、PBS投与群と比較してPPE投与群およびパパイン投与群で有意に肺吸気量の増加、ダイナミックコンプライアンスの上昇を認め、ヒトCOPDの臨床的特徴に一致する結果であった。各群の肺病理HE染色像においても、PPE群とパパイン群では気腫形成が認められた。以上から、既に確立されているPPE投与によるCOPDモデル同様にパパイン反復投与でもCOPDの特徴が誘導されると示された。パパインを反復投与したマウスにおける喘息の特徴の検討については、気管支肺胞洗浄液(BALF)では、パパイン群において総細胞数、マクロファージ、好酸球が他群と比較して有意に増加し、好酸球主体の気道炎症が示唆された。メサコリン吸入に対する気道過敏性試験では、パパイン群は他群に対して有意に気道過敏性の亢進を示した。さらに、全肺のホモジネートを用いてmRNA発現を定量的PCRで調べたところ、エオタキシンファミリー(CCL11, CCL24)の発現亢進が認められた。以上から、本モデルはヒト気管支喘息に相当する特徴も有することが示された。前述の通りヒトCOPDとしての特徴を持つことも合わせ、本研究におけるパパイン反復投与マウスはヒトACOを模したモデルとして妥当であると示された。
2: おおむね順調に進展している
理由上記の研究結果について、学術誌に報告した。(A mouse model of asthma-chronic obstructive pulmonary disease overlap induced by intratracheal papain, Allergy. 2021 Jan;76(1):390-394.doi:10.1111/all.14528. Epub 2020 Aug 19. )
今後は、上記のACOマウスモデルについて、肺上皮細胞についてのRNA-seq等での網羅的な解析を行い、特徴的な発現遺伝子の有無を含め、さらなる検討を行う予定である。
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