研究課題
若手研究
EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌患者のEGFR-TKIに耐性化後の検体では治療前よりもPAI-1発現が亢進していることが示された。続いて、EGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株を用いた実験により、PAI-1が肺癌細胞のEGFR-TKIに対する耐性に関与していることが確認された。 また、PAI-1は癌細胞の耐性化に細胞外マトリックスとインテグリンを起点としたEMTを介して関与していることが示された。続いて、マウス皮下腫瘍モデルによる実験により、オシメルチニブ単独投与により耐性化した腫瘍ではPAI-1が高発現しており、オシメルチニブにPAI-1阻害を併用投与すると,この再増大が抑制されることが示された。
肺癌の85%を占める非小細胞癌に対する薬物療法は進歩を続け、その治療成績は向上している。その中で、オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者に対する標準治療薬であり、本薬剤は約70%の症例において奏効することが示されている。しかし一方で、完全寛解には至る症例は非常に少なく、大部分の症例は癌細胞がオシメルチニブに対する耐性を獲得する。よって、この耐性機序を克服する治療方法の開発が求められている。本研究では、PAI-1阻害剤がオシメルチニブに対する耐性克服のための有望な治療薬となることが示されたことに大きな意義があるものと考えられる。
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