研究課題
若手研究
本研究は、高齢者に対して、通常行っている歯磨き行為に加えて舌清掃の介入を行うことが呼吸や摂食嚥下機能に重要な舌骨上筋群にどのように影響を与えるか検討することを明らかにすることを目的とし、根拠に基づいた口腔ケア方法を開発することを目的とした。65歳以上の高齢者50名を対象に、介入群(日常的な口腔清掃に加えて舌清掃を行う)と対照群(日常的な口腔清掃のみ)の2群に分け6週間のランダム化比較試験を実施した。ベースラインの評価項目として舌の衛生状態、残存歯の状態、嚥下機能、日常生活動作(ADL)、認知機能、基礎疾患、栄養状態、舌圧および呼吸機能、舌骨上筋群筋活動について調査を行った。6週間後の評価項目として、舌の衛生状態、嚥下機能、呼吸機能、舌圧および舌骨上筋群の筋活動について再調査を行った。人口統計学的特性、身体的健康状態および認知機能に関するデータは、標準的な質問票の実施および施設内の医療記録を通じて取得した。舌骨上筋群の筋電活動を評価するために表面筋電図(sEMG)を使用した。sEMGデータは、マイクロボルト二乗平均平方根(RMS)として評価し、吸入および呼気中のsEMGと強制肺活量(FVC)を評価した。本研究の結果では、呼気中のsEMGのRMSは、介入群のベースライン時と比較して、追跡期間の終了時に有意に増加した[48.7(18.0-177.5)対.64.9(21.6-163.0)、p = 0.001]。対照群においては増加しなかった。また、両群において、吸入中のRMSに変化は観察されなかった。本研究の結果より舌清掃は舌骨上筋の筋電活動を高めることが明らかになった。通常の口腔ケアに舌清掃を加えて行う口腔ケア方法は、呼吸や摂食嚥下に重要な舌骨上筋群の向上および機能低下予防につながることが示唆された。
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