研究課題
若手研究
本研究の目的は、韓国における個人・家計の医療費支出や医療アクセス頻度の不平等度を所得水準や年齢階級別に測定し、その格差を構成する要因分解を行って韓国の医療格差の実態やメカニズム、経年変化を定量的に解明することである。医療保険に関する日韓での異なる制度設計が、経済力の差によって同じ医療ニードでもアクセスできる医療サービスに格差をもたらしているのではないかという問いに答えるべく、本研究では「韓国医療パネル調査」の個票データを用い、経済学的な分析手法を応用して韓国における医療格差を実証的に明らかにする。分析手法には、格差の構成要素となる要因分解から寄与度を算出できる平均対数偏差(Mean Log Deviation: MLD)と呼ばれる手法を応用して、韓国の医療格差を実証的に明らかにする。初年度の2018年度には、データ分析に必要なコンピュータやStata等のソフトウェアの購入を行った。分析に用いるデータについても、韓国保健社会研究院(KIHASA)が提供する「韓国医療パネル調査」の個票データを入手し、分析用データセットの構築を行った。また、医療経済学や韓国の医療制度・政策に関する関連文献・資料等を購入し、先行研究や分析手法の整理を行った。2019年度には、引き続き関連文献・資料等を通じて先行研究や分析手法の整理を行うとともに、回帰分析による手法を用いて韓国の医療格差を測定し、その分析結果をまとめて早稲田大学で開催されたセミナー等で報告を行った。2020~2021年度には、「韓国医療パネル調査」の更新データをKIHASAより入手し、それを用いて引き続き回帰分析による解析を行うとともに、その結果を早稲田大学で開催されたセミナー等で再度報告して参加者よりコメントを得た。2022年度には、学術論文を執筆して医療経済学会第17回研究大会で報告するとともに、国際学術雑誌への投稿を行った。
3: やや遅れている
初年度に調達したコンピュータやソフトウェア、医療経済学や韓国の医療制度・政策に関する関連文献・資料等、「韓国医療パネル調査」の個票データを用いて、2年度目からデータ分析を開始している。3年度目には引き続き更新されたデータを用いて統計解析等の実証分析を進めていたが、新型コロナウイルス感染症の問題によって、予定していた海外での学会報告や韓国でのヒヤリング調査を実施できなかった。4年度目も同様の状況が続いた。そのため、再度の事業期間の延長を行った。5年度目である2022年度には論文執筆を完了させて、現在は国際学術雑誌へ投稿中である。
今後は、本研究課題の成果を国際学会等で発表していくとともに、国際学術雑誌への採択を目指す。
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