研究課題/領域番号 |
18K17357
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山内 武紀 昭和大学, 医学部, 准教授 (40576287)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2018年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ヒ素 / 代謝物 / 培養細胞 / ジメチルモノチオアルシン酸 |
研究実績の概要 |
わが国にはヒ素を多く含む海藻や海産物を摂取する独自の文化があることなどから、これまでヒ素を取り扱う作業者における感度・特異度の高い影響マーカーの開発は困難であった。代表者らはこれまで、培養細胞の種類によってヒ素の代謝能が異なり、それらが毒性の組織特性に関連する可能性を示唆してきた。このことを利用し、組織特異性の高い影響マーカーを確立することが本研究の目的である。ジメチルモノチオアルシン酸は3価の無機ヒ素よりも毒性が強い可能性が示唆されている有機ヒ素化合物であるが、代表者らはマクロファージ由来株化細胞がジメチルモノチオアルシン酸を産生することを見出した。前年度までにヒ素に耐性を持つ株化細胞とヒ素曝露のない細胞を利用し、次世代シークエンスにより遺伝子発現量を網羅的に解析した。腸管、膀胱、肝、乳腺、肺由来の培養細胞を用いたところ、ヒ素曝露により共通して発現の上昇した遺伝子や発現の減少した遺伝子を特定した。今年度は培養上清中に含まれるヒ素の代謝物を主に分析した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置を用いた代謝物の分析法開発についても検討したが、生体試料からヒ素を抽出することが困難であり、これについては断念した。培養上清を液体クロマトグラフィー誘導結合プラズマ質量分析装置で分析したところ、由来する組織により代謝物のパターンが異なることが明らかとなった。例えば、肺由来細胞では未知の代謝物を含む少なくとも5つの代謝物が培養上清中に存在するのに対し、膀胱由来細胞では代謝物数は2つ程度であった。現在、遺伝子の発現と代謝物数や代謝物の種類との関連、未知の代謝物の同定などについて検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の根幹をなす問いの一つである「組織によってヒ素代謝が異なるのではないか」という部分については代謝物と遺伝子の両面から概ね答えることができた。ただし、液体クロマトグラフィー誘導結合プラズマ質量分析装置の故障などにより、代謝物の分析がいまだに十分ではなく、すべての標準品とピークを比較することができていない。今年度は動物実験も予定していることから、なるべく早期に検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
液体クロマトグラフィー誘導結合プラズマ質量分析装置が現在は問題なく使用可能になったことから、まずは細胞の培養上清に含まれるヒ素代謝物の同定から進める予定である。代表者の手元には、MMA, DMA, TMAO, アルセノベタイン, DMMTAのように代表的なヒ素代謝物の標準品がいくつか存在することから、まずは未知の代謝物がこれらと同一であるかを確認する。次に、代謝物の種類と遺伝子の発現パターンを比較し、代謝に大きくかかわる原因遺伝子の探索を進める。最後に動物実験により組織特異性の高い影響マーカーを確認したい。
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