研究課題
若手研究
本研究では、血管へのsmall inteferring RNA(siRNA)送達により難治性肺転移がんの新規治療法を確立することを目的とした。肺転移モデルとして、マウス乳がん細胞を静脈内投与することで作成したマウスに血管にsiRNAを送達するシステム(TET-MEND)を投与したところ、悪性化にかかわるたんぱく質の抑制が認められた。また、抗体による抑制によって抗腫瘍効果が知られているdelta-like ligand 4(DLL4)という遺伝子に対するsiRNAを送達したところ延命効果が認められた。
本成果は、既存のがんそのものを狙う治療法とは異なる新しい治療概念を提唱する。がんそのものを狙う治療法ではがんの増殖性に着目した医薬品が多い。そのため、正常な組織の増殖が盛んな毛髪組織や骨髄の免疫細胞にまで障害がおよび副作用の原因となる。一方で、本研究により確立した血管を標的とする治療法はがん細胞を標的としないためにその懸念は小さい。また、この両方が肺転移がんにも応用可能であることを示した。現在、転移したがんに対して有効な治療法は存在しないことから、ステージ後期のがんに苦しめられているがん患者に新たな選択肢を提供できるような治療法の開発に繋がりうる。
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