研究課題/領域番号 |
18K18549
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分5:法学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
児矢野 マリ 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90212753)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2018年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ロシア / 環境協力 / 学際 / 条約 / 渡り鳥の保全 / 漁業 / 風力発電 / 北海道 / 日本とロシア / 北東アジア / 国際法学 / 法規範と政治と科学 / 海洋環境の保全 / 渡り鳥の保護 / 規範 / 科学 / 政治 |
研究実績の概要 |
本年度も、ロシアのウクライナ侵攻の継続により国境を超えたフィールド調査を遂行できない状況は続いたが、研究基盤の強化、文献調査、関連フォーラムへの参加による情報・資料収集、専門家(研究者、実務家)との意見交換等により、一定の成果を得た。 第1に、渡り鳥の保全に関して、自然科学系の学会(日本鳥学会:11月3~6日・網走市)に参加し、日露間の渡り鳥の生態や保全の現状と課題につき、専門家と学際的な意見交換を行い、人的ネットワークを構築した。オホーツク海の海鳥を含む海洋生態系保全に関するシンポジウムや、風力発電施設の影響等に関する研究集会にも出席し、知見を得た。第2に、日露間の生物資源の保全協力の文脈で重要な漁業分野に関して、文献調査と共に、その実践も含め行政実務担当者(水産庁)に話を聴いた(3月)。また、日露両国が加盟する北太平洋公海漁業委員会(NPFC)の年次会合にオブザーバーとして出席し、漁業交渉の実態を参与観察し、関係者(行政実務担当者、業界団体関係者、関連NGO)と意見交換も行った(3月17~24日・札幌市)。以上を踏まえ、論考をまとめた。第3に、とりわけ日露双方にとり重要なサケ・マス漁業について、水産科学や漁業ガバナンスの専門家から成る国内の勉強会に参加し(2回)、最新の動向を踏まえ、多角的に意見交換を行った。また、国際サケ年の国際シンポジウム(10月・バンクーバー)に出席し、多くの知見を得て、国内外の専門家とネットワークも構築した。加えて、北海道東部沿岸のサケ類資源管理に関して、水産科学者のフィールド調査に同行し、自治体でヒヤリングを行い、理解を深めた(9月、10月)。最後に、越境環境協力を支える越境環境影響評価に関する国際法の発展動向に照らした日本の課題について、日露間の天然共有資源の保全も視野に入れて再整理し、学会で発表し、共著書と単著ペーパーを刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究においては、主に5つの目標があった。すなわち、①社会科学と自然科学の協働のため、認識枠組・基礎概念を共有して分析方法を開拓すると共に、国際関係論・国際政治学等の最新の知見を踏まえ、新たな発想から、日露を含む北東アジアの国際関係で通用する法・規範モデルを、特に環境分野を意識して構築すること、②日露政府間の枠組につき、実態調査も行い、多角的な分析に着手すること、③既存の民間イニシアチブ(学術交流・共同研究・合同調査等)を発掘して、実績等も含めて分類・整理すること、④日露両国の関連国内法・政策について文献を収集し、枠組を理解すること、⑤将来の文理融合研究の可能性を追求するべく、日露両国の研究者・実務家を含む関係者と機能的なネットワークの構築を進めること、であった。 しかし、この数年間の日露間の協力関係の停滞、コロナウイルス感染症の蔓延、ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際秩序の動揺と日露関係の悪化の影響を受け、以上の目標の達成はかなり遅れている。まず、上記の結果として日露を含む北東アジアの国際関係で安定的に通用する法・規範モデルの構築が容易ではなく、①の作業は難航している。次に、本研究の特徴であるロシアへの渡航調査(科学者とともにロシア極東(ウラジオストック)の研究機関(太平洋地理学研究所等)の訪問、鳥類研究者による日露間を渡る猛禽類の共同調査への同行、日本鳥学会への参加、北方領土ビザなし交流のロシア人参加者のヒヤリング調査、ロシア研究者の招聘ワークショップ(科学者と合同で開催)(同左)等)は困難である。ゆえに、②、③(一部)及び⑤も当初の予定通りに進んでいない。④についても、最新資料・データの入手が容易でなくなった。本年度からアプローチを変更したが、その成果はまだ不十分である。そのため、本年度内に研究を完遂することが難しく、研究期間の再延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアのウクライナ侵攻の影響により本研究の推進に予断を許さない状況は、今後暫く続くことが予想される。ゆえに、この状況が早期に収束することを期待しつつも、当初予定していたアプローチを変え、これまでの実績を踏まえて、日本国内で推進可能な方法を推進し、将来の新たな研究に繋がるような成果を上げるよう、作業を加速し、最終成果を効率的にとりまとめる。第1に、昨今の変動要因に留意しつつ、現在顕著な安全保障要因による国際協力の揺らぎに注目し、研究協力者(国際関係論)の支援も得ながら、より広い視点で環境協力の推進にかかる新たな法・規範モデルの構想を追求し、日露関係および東アジアの特異な状況も踏まえ、その成果を検証する(①地域環境協力に関する法・規範モデルの構想)。第2に、日露間の渡り鳥の保全に関して、研究協力者(鳥類研究者)との協働及び本年度構築した鳥類専門家とのネットワークを駆使して、既存の日露間民間イニシアチブ(学術交流・共同研究・合同調査等)の調査を精力的に進め、実績も含め分類・整理を進める(②既存の協力イニシアチブの分析・整理)。さらに、昨今の再生エネルギー推進の文脈も踏まえ、日露間の共有天然資源としての渡り鳥や海洋哺乳動物を含む海洋生態系に対する風力発電施設の影響に着目し、越境環境影響評価のあり方に引きつけて越境環境協力のあるべき姿について構想し、先進的な既存の越境/地域間協力と比較しながら検証する。第3に、日露間の海洋生物資源の保全協力として、持続可能な漁業の問題に焦点を当て、これまでの作業をさらに発展させ、上記①との間の相互フィードバックを図り、各論として成果をまとめる。第4に、ロシア環境政策・ロシア法の文献の収集・整理とデータベースの作成については、可能な範囲で作業を加速させる(③ロシア関連法政策の把握と比較検討、④データベース化))。
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