研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究の目的は、法学者・心理学者・脳神経科学者による学際的研究を行い、取調の適切性が客観的に測定可能な指標(尺度)の構築を目指すことである。本年度は、これまでに実施した心理学実験の結果について再分析を行った。目撃者に対する取調べにおいて、自由報告を求めるオープン質問(例.あなたが見聞きしたことをすべてお話しください)は、正確でより多くの情報を引き出すのに有効であることが明らかにされている。しかし、オープン質問を中心に行う面接法を習得することは容易ではない。例えば、面接者が事件に関する複数の情報を得ている場合、その情報にもとづいて予断をもって取調べを行い、被面接者に対して暗示的な質問をする可能性もある。本実験では、事件の目撃者に対する面接場面において、事件に関する面接者の知識の有無、目撃者の個人特性(被暗示性、迎合性)や記憶能力(ワーキングメモリ)が、目撃者から得られる情報の質と量に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。面接者と被面接者(目撃者役)の発話内容を分析した結果、事件に関する面接者の知識の有無が、面接者自身の発話内容に影響を及ぼすことが示された。つまり、事件に関する知識がない面接者が質問を行う場合、「事件の中心的事象」に関する質問が多くなる傾向にあった。また、被暗示性,迎合性の程度が低く,ワーキングメモリが平均以上の被面接者であっても、面接者の誘導や暗示の影響を受けることが示された。以上の結果から、単にオープン質問を行うだけでは取調べの適切性は担保されないこと、事件に関する知識に左右されずに面接を行うためには、十分な訓練に加え、面接内容の適切性を常にチェックする必要性が示唆された。
4: 遅れている
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、実験が計画通りに実施できなかった。
計画していた心理学実験、MRI実験を実施し、データの解析、及び成果報告に尽力する。特に論文投稿を積極的に行う。
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