研究課題/領域番号 |
18K18720
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 (2021-2022) 神戸大学 (2018-2020) |
研究代表者 |
梶野 直孝 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (90700352)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2018年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ラプラシアン / フラクタル / Klein群の極限集合 / Sierpinski carpet / 自己等角フラクタル曲線 / 擬等角写像 / Klein群の擬等角変形 / 複素力学系のJulia集合 |
研究実績の概要 |
2022年度は,新型コロナウィルス感染拡大に伴い2020年度および2021年度には中止されていた対面での国際研究集会が再び各地で開催されるようになり,その結果として他の科研費研究課題とより密接に関わる研究集会への参加が続いたため,本研究課題以外の職務や研究に多くの時間を費やすことを余儀なくされた.特に他科研費研究課題の一環として2021年3月に開催を計画していた国際研究集会が二度の延期を経てようやく2022年度末に開催できる見込みとなったことから年度の後半はその準備に追われ,幾何学的関数論や複素力学系の専門家を研究集会に招待しある程度の交流を持つことはできたものの,本研究課題に係る研究活動は残念ながらごく僅かしか行うことができなかった. 具体的には,まず本研究課題の前提であるApollonian gasket上のラプラシアンに関する結果,および2018年度中に得られていたKlein群(Riemann球面上のメビウス変換のなす離散群)の作用で不変かつSierpinski carpetと同相な円詰込フラクタルにおけるラプラシアンに関する結果について,その詳細を記した論文の完成は果たせなかった. またKlein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相だが円詰込でないフラクタル(の扱い易い具体例)における幾何的に自然と思われるラプラシアンの候補について,過年度の研究には再検討の結果誤りがあったことが判明し,ラプラシアンの定義可能性の証明から改めて考え直さなくてはならなくなってしまった.再度の考察の結果,定義可能性は無事証明できそうであるとの感触は何とか得たものの証明の完成には至らなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度の時点で既に解決の見通しが立っていた等角写像の有限族の作用で不変な単純フラクタル曲線における幾何的に自然なラプラシアンの構成と解析については,Weyl型固有値漸近挙動の証明が完成間近であったにも拘らず2022年度は他の職務・研究の都合によりこれを完成させることができなかった.この話題は解決困難であろうと本研究課題の応募時点で見込んでいたものであるとはいえ,完成を目前にして長期間足踏みしてしまっている現状は遅れていると評せざるを得ない. Klein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相だが円詰込でないフラクタル(の扱い易い具体例)については,ラプラシアンの定義可能性の証明に誤りがあったことを正しく認識できたこと自体は研究の進展とみなせなくもないが,より前の段階からの再検討を余儀なくされていることは誤算であり,当面の目標であるWeyl型固有値漸近挙動の証明に向けた進捗状況は2022年度当初の見込みからは大きく遅れてしまっている. 2019年度末までに得られた結果およびその前提となる結果に関する論文の執筆についても,時間の不足のため詳細な証明を記した論文の完成には依然として至っておらず,最も基本的な場合であるApollonian gasketの場合でさえ論文の完成にはもうしばらく時間を要するという状況である. 以上から,検討中の課題の困難さに鑑みると仕方がない部分もあるものの,研究課題全体としては2022年度末時点での進捗状況は年度当初に見込んでいた水準より遅れていると評価せざるを得ない.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2022年度には他の職務・研究の都合による時間不足を原因として停滞を余儀なくされたため,今後の研究の推進方策は基本的には2022年度当初に想定していたものを踏襲する. 具体的には,まず等角写像の有限族の作用で不変な単純フラクタル曲線における幾何的に自然なラプラシアンの構成と解析について,既に見通しが完全に立っているWeyl型固有値漸近挙動の証明を速やかに完成させる.さらにこの場合に対する知見を土台として,Klein群の作用で不変かつSierpinski carpetと同相だが円詰込でないフラクタル(の扱い易い具体例)に対しても速やかにラプラシアンの定義可能性の証明を完成させ,続けてNash不等式やcutoff Sobolev不等式などの基本的な関数不等式,ひいてはWeyl型固有値漸近挙動を証明することを目指す. 一方,上記と並行して円詰込フラクタルにおける研究についても,前提となるApollonian gasketに対する結果およびSierpinski carpetと同相な円詰込フラクタルに対する結果に関する論文の執筆を急ぐ. さらに以上の研究に関し国内外の研究集会で研究発表を行い,結果の周知に努めるとともに関連分野の専門家らの知見を乞う.新型コロナウィルス感染症の蔓延による渡航制限がほぼ撤廃された2023年度は世界各地で関連分野の研究集会が多数予定されているため,それらへの出席を通して各分野の専門家らと積極的に交流するよう心掛ける.
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