研究課題/領域番号 |
18K18765
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
森川 雅博 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (90192781)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 揺らぎ / 同期 / 共鳴 / 赤外発散 / 振幅変調 / 復調 / 地球自由振動 / 5分振動 / 超巨大ブラックホール / 暗黒物質の分離 / BEC / スクイーズド状態 / コヒーレント状態 / ドライノイズ / 相転移 / 対称性の自発的破れ / ボーズ凝縮 / 赤外揺らぎ / ユニゾン(音楽) / UBR(音楽) / 惑星形成 / 乱流ゆらぎ / 量子凝縮 / 銀河形成 / ダウンサイジング / 量子揺らぎ / 量子痕跡 / 恒星惑星磁場 / 暗黒物質 / 暗黒エネルギー / ダークハロー / 宇宙ジェット / 暗黒物質・エネルギー |
研究実績の概要 |
前年までに,銀河を育てる原初超巨大ブラックホール(SMBH)を生成する機構を原理的に解明してきた.その延長で,今年度は特に,量子論をはじめと揺らぎの基本原理に関わる理論を構成した.これはブラックホール固有振動が示す一般的な現象でもあるので,重力波を通して直接観測される可能性がある. 自然界の多様な系における低周波の揺らぎには1/f揺らぎという一般的な様相がある:BHを含む降着円盤や,重力波検出器の電子デバイス,太陽フレア,変光星,地震など.その原因を求めて100年ほどたつが未解決である.この理論を振幅変調として理論を作った.つまり,指数関数的またはべき的に集積する振動数を持った多数の波が唸り,低周波に特徴的な信号を出すのである.その振動数集積の3つの基本的な物理を見出した:同期,共鳴,そして赤外発散である.また,この理論では低周波信号が出るためには復調が必要で,いろいろな復調が1/f揺らぎの多様性を作ることを示した. この理論に基づいて,太陽フレア,変光星,地震について解析した.すべて共鳴が基本になっていると考えられた.これらの時系列がすべて1/f揺らぎを示すことをまず見出した. 地震については,全世界でも日本でも,もっと局所でも,激震を除けばきれいな1/fのべき則を示す.共鳴体はリソスフェアであり,地球自由振動が担う.復調は断層破壊で起こる. 太陽フレアでは,5分振動が共鳴を担う.復調は磁気再結合であると推測される.この1/f揺らぎの視点から,地震の機構との類似性と共通の物理が強く推測された.また変光星(脈動変光星)のライトカーブにも1/f揺らぎがあることを見出した.太陽の場合と同様の5分振動もどきが共鳴を担い揺らぎを出すのか,あるいは星の各部分で起こる熱的振動の結合による同期が揺らぎを出すのか,解明を進めた.どちらの可能性も認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SMBHの物理を超えて,宇宙でもっと一般に適用できる物理の原理を見出した.このことは当初予期していなかったが,同時進行していたいくつかの課題との融合で進展した. 1/f揺らぎは自然界どこにも存在する普遍的な低周波領域の揺らぎである.1925年のジョンソンによる発見以来,様々な理論が作られ提唱されたが,いまだ有効な論が見出されていない.これを非常に単純な振幅変調から説明できたことは重要である. 特に,振幅変調だけでなく.1/f揺らぎの発現のためには復調が必須であること,それからこの復調が整流や閾値などいくつもありこの多様性が1/f揺らぎの多様性に繋がっているという発見も重要である. 宇宙物理,太陽物理,地球物理などと地上の物理とをつなぐことができる.電流揺らぎと,神経発火の閾値を復調機構として,生物物理に現れる生体の1/f揺らぎともつながる.実際,1/f揺らぎの現れ方が頑強で,様々な隣接系にこの揺らぎの様相を連鎖させうることを見出した. この1/f揺らぎの機構を解明できたことは,当初の研究課題であったSMBHの様々な理論予想の検証としても使える可能性を与えたことで重要である.
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今後の研究の推進方策 |
1/f揺らぎの振幅変調・復調説は,いくつかの多様な研究につながる.理論が成立するカテゴリーが,同期,共鳴,赤外発散なので,それぞれの発展を同時に推進していきたいと思う. 同期:ダイナミカルなモデルの1/f揺らぎの解明.今まで静的なモデルを発展させダイナミカルな様相を入れるとその普遍性が一気に広がる.ハミルトン平均場理論,マクロスピンモデル,熱機関の同期モデルなどに応用したい.すると自己重力系の揺らぎ,天体磁場の揺らぎ,恒星光度の揺らぎなどへの応用研究につながる. 共鳴:これも1/f揺らぎの典型であり,特に驚くほどの低周波まで構造を作ることができる.この場合の1/f揺らぎの起源は,長時間の相関ではなく,集積する周波数を持つ多数の波である.この場合,振幅変調という唸りによって低周波信号が出現するのだから,マクロな構造が重要なのではなく,ミクロな構造がどれだけ精密に持続するかに拠っている.この意外性も面白いと思う. 赤外発散:電流が伝導体や半導体中を流れる時,普遍的に1/f揺らぎを示す.これは伝導電子波束が不純物と衝突して光子やフォノンを放出した反作用の総体が作る揺らぎであるとする理論を進める.光子やフォノンは0質量なので,放出確率が赤外発散している.この反跳で電流も1/f揺らぎを示すことになる.これは電子デバイスの揺らぎでも重要だが,神経発火を復調機構として,生体の示す1/f揺らぎにも影響する;心臓の鼓動や脳波の揺らぎ.さらには,人間の時間の感知感覚にも影響を与え,1/f揺らぎが偏在する一因となっている. 一方,初期宇宙においても,インフレーションによって誘起増幅された量子揺らぎがマクロになって示す揺らぎもちょうど赤外で発散するスペクトルになっている.これはインフラトンがほとんど0質量であることによる.この理論を場の理論から整備する.宇宙が初めから1/f揺らぎを呈していたのは興味深い.
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