研究課題
挑戦的研究(萌芽)
栄養塩飢餓と強光ストレスで誘導される超オイル細胞を用いて、ω3脂肪酸やカロテノイドなどの機能性物質を蓄積した細胞工場(クロレラ・ファクトリー)をつくり出そうと考えた。実用化を意識して細胞工場に適した株の選別に注力した。トレボウクシア藻綱を中心に緑藻を広く収集して、分子系統解析を実施することで、バイオマスに加え油脂やカロテノイドの生産性と種や株の系統関係を明らかにした。調査した種や株のほとんどは、独立栄養だけでなく従属栄養や混合栄養でも容易に培養することが可能でバイオマス生産性も高いことがわかった。従属栄養下の油脂生産性は株によって大きく異なるがオイル含量が50%を越えるような株もあった。
2021年4月の「2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比で46%削減する」との政府発表は、パリ協定にもられた26%でも実現を危ぶまれていたので、各界に衝撃をもって受け止められている。地球温暖化は待ったなしであるが、世代時間の短い微細藻類であれば、10年間の研究期間でも二酸化炭素削減に資する新たな品種を開発できる可能性がある。微細藻類を「育種する」という発想こそが、応用微生物学の新たなトレンドになると考え、多くの株とその培養方法を検討するとともに重イオンビーム照射による分子育種法を開発してきた。カロテノイドと長鎖不飽和脂肪酸を大量生産する「超オイル細胞」の作出はその延長線上にある。
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