研究課題
挑戦的研究(萌芽)
ヒトの身体には血管とリンパ管が存在し、ふだん血管には血液が、リンパ管にはリンパ(液)が流れている。がんや炎症などの病気が生じると、多くの組織では血管が拡張し、血管を増やす因子が発現する。この因子は血管新生因子と呼ばれ、病的な状態ではリンパ管の拡張や増殖を促す場合もある。今回の研究では、強制的に血管新生因子を舌に発現させたマウスを用いて、野生型マウスの舌と比較しながら血管とリンパ管の変化をレーザー顕微鏡で観察した。この結果、血管・リンパ管が拡張・増殖するだけに止まらず、強制的に発現した血管新生因子に晒された舌では、所々で血管とリンパ管が吻合し、血液がリンパ管を流れていた。
従来、血管とリンパ管は末梢組織において独立して存在し、血流とリンパ流は互いに交わることはないと考えられている。しかし、今回の研究結果では、ある病的な環境では血管とリンパ管が吻合する場合があり、血流がリンパ流へ流れ込む可能性があることが示唆された。一般に、複数の癌腫では病期分類が行われ、この因子には癌組織における脈管侵襲やリンパ節転移あるいは遠隔転移が挙げられる。今後、本研究成果に基づいて、もしヒトの癌組織において血管及びリンパ管が交通することが示唆される場合には、病期分類の因子について、その独立性や関連性がさらに検討され、議論される必要があるかもしれない。
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