新規癌遺伝子５ＭＰ１によるｎｏｎ－ＡＵＧ翻訳制御の生物学的役割に関する研究

• 研究課題/領域番号: 18K19963
• 研究種目: 国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 生物系
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 浅野 桂 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 特任教授 (80838962)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• 研究課題ステータス: 交付 (2022年度)
• 配分額: 61,750千円 (直接経費: 47,500千円、間接経費: 14,250千円)
• キーワード: 翻訳リコーディング / 翻訳制御 / アデノ随伴ウィルス / non-AUG開始コドン / 翻訳メカニズム / ゲノム翻訳マップ / 翻訳制御タンパク質５M P / 反復配列依存性non-AUG(RAN)翻訳 / 癌遺伝子 / 翻訳制御タンパク質5MP

研究実績の概要

本年度は課題１の5MPによる翻訳制御のゲノムワイドな効果を明らかにする手法であるribosome profilingの導入を、海外より専門家を招いて行った。広島大学の外国人特任助教招聘制度を活用し、コーネル大学のShu-bing Qian研究室よりXin Shu特任助教、コーク大学のParval Baranov研究室よりMartina Yordanova特任助教を招聘した。コロナ禍により入国が大幅に遅れたものの、夏休み期間中に来日し、薬剤処理を施した癌細胞や受精初期の卵細胞を用いたライブラリを作成し次世代塩基配列決定法によって翻訳が制御されるコード領域を同定した。
課題３のアデノ随伴ウイルスの翻訳制御について、5MP1とRep78, Rep68, Rep40の相互作用をBLI法により解析した。Rep78に特異的に存在するC末端断片が5MP1との高い親和性に必要であること、この断片が関わる相互作用が5MP1の酸性表面に依存することを見出した。アデノ随伴ウイルスの「ポリシストロニック」mRNAであるVP2・VP3 mRNAの全てのシストロンのルシフェラーゼレポーターを作成し、ヒト細胞内でnon-AUG開始コドンからの翻訳をエンハンスするRNA領域を二つ同定した。遺伝子治療ベクターとして使用されるアデノ随伴ウイルスの産生量を増やすというゴールに向けて、この二つのエンハンサー領域の相互作用因子を同定する実験を計画中である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍により遅れはあるものの、海外協力者の助力によりデータサイエンス手法の導入を進めることができた。分子動態力学手法も取り入れ、non-AUG開始コドンの化学修飾による開始活性の調節という新たな概念を提示し、Science Advances誌に掲載した。反復配列依存性non-AUG(RAN)翻訳については、Charles Reys博士との共同研究によりX-linked dystonia/parkinsonismを起こすAGAGGGリピートがRAN翻訳を行うことを示し、Movement Disorders誌に掲載した。

今後の研究の推進方策

大きな変更は必要ないが、データサイエンス手法の導入にさらに力を尽くしたい。

研究成果

• [国際共同研究] Kansas State University/NIDCR, NIH/Cornell University(米国)
• [国際共同研究] University College Cork(アイルランド)
• [国際共同研究] Kansas State University/University of Michigan/Cornell University(米国)
• [国際共同研究] University College Cork(アイルランド)
• [国際共同研究] コーネル大学医学部/NIAID, National Institutes of Health/ミシガン大学医学部(米国)
• [国際共同研究] University College Cork(アイルランド)
• [雑誌論文] Between Order and Chaos: Understanding the Mechanism and Pathology of RAN Translation (2023)
  • 著者名/発表者名: Charles Jourdan Reyes, Katsura Asano
  • 雑誌名: Ｂｉｏｌｏｇｉｃａｌ ＆ Ｐｈａｒｍａｃｅｕｔｉｃａｌ Ｂｕｌｌｅｔｉｎ 巻: 46 号: 2 ページ: 139-146
  • DOI: 10.1248/bpb.b22-00448
  • ISSN: 0918-6158, 1347-5215
  • 年月日: 2023-02-01
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Repeat-Associated Non-AUG Translation of AGAGGG Repeats that Cause X-Linked Dystonia-Parkinsonism (2022)
  • 著者名/発表者名: Charles Jourdan Reyes, Katsura Asano, Peter K. Todd, Christine Klein, Aleksandar Rakovic
  • 雑誌名: Movement Disorders 巻: 37 号: 11 ページ: 2284-2289
  • DOI: 10.1002/mds.29183
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Translational recoding by chemical modification of non-AUG start codon ribonucleotide bases (2022)
  • 著者名/発表者名: Yoshihiko Fujita, Takeru Kameda, Chingakham Ranjit Singh, Whitney Pepper, Ariana Cecil, Madelyn Hilgers, Mackenzie Thornton, Izumi Asano, Carter Moravek, Yuichi Togashi, Hirohide Saito, Katsura Asano
  • 雑誌名: Science Advances 巻: 8 号: 14
  • DOI: 10.1126/sciadv.abm8501
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Human oncoprotein 5MP suppresses general and repeat-associated non-AUG translation via eIF3 by a common mechanism (2021)
  • 著者名/発表者名: 49.Chingakham Ranjit Singh, Marry Rebecca Glineburg, Chelsea Moore, Naoki Tani, Rahul Jaiswal, Ye Zou, Eric Aube, Sarah Gillaspie, Mackenzie Thornton, Ariana Cecil, Madelyn Hilgers, Azuma Takasu, Izumi Asano, Masayo Asano, Carlos R. Escalante, Akira Nakamura, Peter K. Todd, and Katsura Asano
  • 雑誌名: Cell Reports 巻: 36 号: 2 ページ: 103976-103976
  • DOI: 10.1016/j.celrep.2021.109376
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Origin of translational control by eIF2α phosphorylation : insights from genome-wide translational profiling studies in fission yeast (2021)
  • 著者名/発表者名: Katsura Asano
  • 雑誌名: Current Genetics 巻: 67 号: 3 ページ: 359-368
  • DOI: 10.1007/s00294-020-01149-w
  • 査読あり / オープンアクセス
• [備考] K-State biologists find new therapeutic target....
  • URL: https://www.k-state.edu/today/announcement/?id=75929