研究課題/領域番号 |
18KK0043
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
島村 靖治 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50541637)
|
研究分担者 |
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (40621751)
松島 みどり 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20634520)
神谷 祐介 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (30636072)
中澤 港 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (40251227)
佐藤 希 愛知学院大学, 経済学部, 講師 (30838040)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2019年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2018年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | プライマリ・ヘルスケア・システム / 医療保険制度 / インドシナ半島 / ベトナム / カンボジア / ラオス / プライマリー・ヘルスケア / 国際比較 / プライマリ・ヘルスケア / ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ / インドシナ |
研究実績の概要 |
本研究は、2015年に国連で採択されたSustainable Development Goals(SDGs)の第3重要課題に設定された「健康な暮らし及び厚生の促進」に関連した研究課題に対して、既存データならびに現地調査を通して収集する独自データを用いて取り組むことを目的としている。 2022年度は、ベトナム中部で収集した独自調査データを用い、医療従事者の利他性の分析を行った。医療従事者の利他性は医療サービスの質やパフォーマンスに影響を与える要因であると考えられている。しかし、個人がどの程度他人に対して利他的であるかを知ることは困難である。本研究では、ベトナム中部3省の50村落医療施設において2014年および2017年に調査を実施し、医療従事者に対する仮想的な独裁者ゲームにより彼らの利他性を数値化した。そして、各年のデータを使った多変量解析により、利他性と関連する要因を探った。また同時に、2014年から2017年に起きたどのような変化が医療従事者の利他性の変化と関連しているかを探ることにより、どのような要因が利他性を決定づける要因となっているのかを検証した。まず、クロスセクション分析からは、年齢や性別、教育水準や職務といった医療従事者個人の特性よりも、職場環境の要因なかでも同じ村落医療施設で働く同僚の利他性との相関関係が強いことがわかった。更に、パネルデータ分析からは新たに二人以上の医療従事者が勤務を開始した村落医療施設において同僚の利他性との相関関係がより強くなっていたことが確認された。このことは因果的な関係として同僚の利他性が各医療従事者の利他性にも影響を及ぼしていることを示唆している。こうした分析結果について国内学会で発表を行った。なお、利他性に関する研究は緒に就いたばかりである。なかでも、利他性と医療サービスの質やパフォーマンスとの関係の検証については今後の課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに実施してきた独自調査データ及び公開されている既存データを使った研究については、次のような論文の執筆に取り組んでいる。まず、ベトナムでは、中部3県において実施した独自調査データを使い2016年に導入された(ア)保険料の家族割引制度の加入率への影響、(イ)リファラル制度の改正による医療施設選択行動への影響についての分析を進めている。(ウ)更に、医療従事者の利他性と医療施設選択行動との関係についても検証している。また、ベトナム統計局が隔年で実施しているVietnam Household Living Standard Surveyを使い(エ)医療保険市場における「情報の非対称性」の問題の検証を行っている。 他方で、新たな現地調査については、新型コロナウィルス感染症の全世界的な蔓延により、日本人研究者が現地調査に同行できないだけでなく、現地のカウンターパートによる活動も大きく制限され、これまでのところ実施できていない。そのため、研究の進捗には大きな遅延が生じてしまっている。ベトナムにおける独自調査の大きな目的は、2020年の医療保険の皆保険化の達成過程をリアルタイムでモニタリングし、そこから近い将来大々的な医療保険制度の導入が予想される近隣諸国にとっての教訓を引き出すことであった。しかし、2020年に調査の実施ができなかったため、現在は新型コロナウィルス感染症の蔓延が皆保険化の達成過程に与えた影響や、人々の医療施設選択行動に与えた影響を検証できるよう質問票を改定し、2023年中に実施する計画を立てている。更に、インドシナ半島の3ヵ国で実施を予定している3ヵ国ほぼ統一スタイルの医療施設調査および医療従事者調査に関しても、各国におけるポストコロナの状況を踏まえて質問票を改定しつつ、2023年秋頃までにはフィールド調査が実施できるよう準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き既存データとこれまでに実施した独自調査データを使った分析ならびに論文の執筆、研究発表を行っていく。なかでも、7月初めにベトナム、フエで開催されるメコン川流域諸国における公衆衛生に関する国際カンファレンスで、我々のこれまでの研究成果について国際的に発信する予定である。同時に、2020年に実施を予定していたベトナムにおける家計調査を2023年中に実施し、その後、分析と論文の執筆を行う。加えて、インドシナ半島の3ヵ国(ベトナム、ラオス、カンボジア)で実施を予定している第一次医療施設における独自調査についても、2023年秋までには調査を実施し、その後、分析および論文の執筆に取り組む。こうした2023年度の計画について、2023年3月にそれぞれの国のカウンターパート(ベトナムではフエ医科薬科大学、カンボジアでは国立公衆衛生局、ラオスでは国立感染症研究所)と対面での打ち合わせを行い、合意している。 なお、新型コロナウィルス感染症蔓延後の状況を念頭に、家計調査においては、人々はどの程度感染症を恐れて医療施設を直接訪問しなくなったのか、どの程度遠隔医療サービスを利用するようになったのかを検証する。また、医療施設調査では遠隔医療サービスの提供体制の実態を調べる。そして、医療従事者調査では、感染症予防行動を把握する共に、医療サービスの提供がどの程度各国のガイドラインに沿って実施されているかを検証する。更に、医療施設における出口調査では医療サービスを利用した人々にその満足度を質問すると共に、感染症予防行動や高血圧など非感染症予防行動についても質問する。こうした調査を、基礎的な疾病・疾患に対する医療サービスを利用した人々と妊娠・出産などの母子保健に関するヘルスケアを利用した人々、それぞれに対し実施することで、3ヵ国のプライマリー・ヘルスケア・システムの国際比較を行う計画である。
|