研究課題/領域番号 |
18KK0071
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分11:代数学、幾何学およびその関連分野
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研究機関 | 学習院大学 (2019-2023) 大阪大学 (2018) |
研究代表者 |
大鹿 健一 学習院大学, 理学部, 教授 (70183225)
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研究分担者 |
北山 貴裕 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10700057)
河澄 響矢 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (30214646)
山崎 玲 (井上玲) 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30431901)
宮地 秀樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40385480)
久野 雄介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80632760)
山田 澄生 学習院大学, 理学部, 教授 (90396416)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2019年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2018年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | Teichmuller空間 / 非対称距離 / 写像類群 / Finsler距離 / Thurston計量 / 双曲構造 / Finsler計量 / タイヒミュラー空間 / 双曲幾何 / クラスター代数 / Thurston非対称計量 / Johnson準同型 / Teichmuller理論 / Klein群 |
研究実績の概要 |
大鹿はTeichmuller空間の2つのFinsler距離,Thurstonの非対称距離と,earthquake距離についての研究をStrasbourgでのPapadopoulos, Yi Huang, Huiping Pan, Assaf Bar-Natanらとの共同研究を通じて行なった.Thurstonの非対称距離については,距離から誘導されるノルムが,Teichmuller空間の接空間の単位球にもたらす凸構造が距離の無限小剛性の原因となっていることから,その構造を幾何的に記述することを試みた.特に単位球を構成する面はharmonic stretch mapの概念を通じて,disjointなchain-recurrent laminationsの非負1次結合の全体として記述できることを示した.これは単位球の凸構造が計量を忘れた組み合わせ構造としては,Teichmuller空間の点によらず一定というこれまで予想されなかった結果を導く. Earthquake距離については,昨年度証明した非完備性や無限小剛性に加えて,完備化がaugmented Teichmuller空間になること,完備化で得られる境界への距離の評価,十分長いearthquake pathが決して測地線にならないことなど新たな性質を証明することができた. 久野,河澄はゴールドマン・リー代数を用いたジョンソン準同型の研究を行ってきた.特にジョンソン準同型の新しい障害を幾何的に得ることを目指し,曲面上の曲線に対する高次のループ演算を見つけることに取り組んできたが,今年度は,久野が佐藤と共同でその候補と思われるループ演算の導入に成功した.久野がStrasbourgで,新しいループ演算の研究の現状を報告し,Papadopoulos, Enriquezらと議論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までコロナ禍の影響が残り,Strasbourg大学での共同研究が遅れていたが,今年度は急速にその遅れを取り戻した.特に大鹿が行なっているTeichmuller空間の非対称な2種類のFinsler距離についての共同研究は,Strasbourg大学を拠点として,国際的な共同研究として発展しつつある.論文の執筆も,これまでの遅れを取り戻して進んでいる.昨年度までの大鹿とPapadopoulosらの共同研究の結果も順次学術誌への出版が決まっており,順調に公表されている.また研究成果の口頭発表もStrasbourg大学をはじめとするヨーロッパのいくつかの大学で行っている.久野,河澄のジョンソン準同型の研究も順調に進んで,遅れを取り戻している.その中で河澄とVespaの共同研究は今年度論文として出版された.
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこの共同研究のまとめをすべき最終年度にあたるので,現在進行中の研究を以下のように結実させたい. Teichmuller空間の2つのFinsler距離,Thurstonの非対称距離とearthquake距離についての理論の完成を目指して次のような問題に取り組む:Thurston距離については,Teichmuller空間の接空間の単位球の凸球としての構造を,face, exposed face, extreme pointsなどの概念を用いて記述し,faceやexposed faceについてはその次元と対応する幾何的対象:chain recurrent laminationが曲面上で持つ性質により記述する.earthquake距離については,この距離の特徴づけとして,earthquake pathを測地線に持つようなTeichmuller空間の写像類群普遍な非対称距離は存在しないことが予想されるが,これを実際に証明することを目指す.さらにearthquakeとstretch写像が構成する構造と弾性体のエネルギーとの類似関係を示し,2つを統一したエネルギーの概念を構成することを目指す. ジョンソン準同型についての仕事では,今年度に定義することに成功したループ演算のジョンソン準同型への応用を目指す.
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