研究課題/領域番号 |
18KK0327
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
建築史・意匠
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研究機関 | 早稲田大学 (2019-2022) 東京大学 (2018) |
研究代表者 |
安岡 義文 早稲田大学, 高等研究所, 招聘研究員 (20786496)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | デザイン理論 / イスラーム建築 / 後ウマイヤ朝 / プロポーション / スポリア / 柱頭 / 幾何学 / イスラーム / 文明交流 / デザイン技法 |
研究実績の概要 |
2022年度はコロナ禍での海外研究滞在の際に生じる渡航上の手続きや研究所の受入制限などの規制が緩和され始めたことを踏まえ、スペインでの海外研究滞在を行い、マディーナト・アッ=ザフラー王宮付属博物館での遺物調査を行い、採取したデータの分析と文献調査に重点を置いて研究活動を行った。具体的には、王宮内の「謁見の間」と呼ばれる部屋に用いられていた柱頭を対象として三次元測量を行い、それから生成した3Dモデルによって寸法およびプロポーションの分析を行った。その結果、マディーナト・アッ=ザフラー王宮の柱頭は、立方体、すなわち立面における正方形を基本とした形をモデュール・システムによって割り付けていく技法によってデザインされていたことが明らかになった。ローマ人建築家ウィトルーウィウスの記したコリント式柱頭の設計方法と似たモデュール・システムでありながら、正方形を基準とする後ウマイヤ朝のデザインの仕方には、独自性も認められ、この技法がこの王朝によって編み出されたものなのか、あるいは古代末期に一般的に知られていたものであるかについては、今後さらに、西ゴート王国やビザンツ建築に用いられている柱のプロポーションを吟味するなど、分析対象を拡げて検討していく必要がある。 スペインのアンダルシア地方を治めた後ウマイヤ朝は、独自の建築様式の確立を目指し、領土内あるいは周辺地域にある優れた建築および遺跡をおとずれ建築装飾や建築表現について情報収集を行っていたと考えられる。情報収集先の具体的な遺跡は不明だが、コルドヴァの大モスク(メスキータ)やマディーナト・アッ=ザフラー王宮にみられるコリント式柱頭やコンポジット柱頭は明らかにローマ帝国の建築遺産を引き継いでおり、理想の建築の姿を同時代のキリスト教国からではなく、古代の大帝国に求めた点が指摘できたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、研究滞在が実施できなかった年度が複数あり、また研究滞在ができた年度も、同状況下において現地スタッフの出勤や研究代表者の行動が制限されていたなど、申請時想定した通りの効率で実測調査が進められなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により、これまで最終年度を2回繰り越してきたが、2023年度は5類移行に伴い最後の研究滞在を行い、最終成果の出版に取り組んでいきたい。
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