研究課題/領域番号 |
18KK0328
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
ヨーロッパ史・アメリカ史
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小田原 琳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70466910)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
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キーワード | 境界 / 記憶 / 紛争 / ジェンダー / ヨーロッパ / アジア / 歴史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ボーダーランドの歴史的経験が、実体としてはトランスナショナルな現象であるにもかかわらず、「想起」と「語り」の枠組みはナショナルでありつづけるという問題について、経験の記憶化のプロセスに働く社会的圧力と、その力学が歴史叙述に及ぼす影響を、紛争や衝突が繰り返された経験をもつヨーロッパの境界地域をフィールドとして検討する。また東アジアの事例との比較を行うことを通じて、グローバルな歴史叙述のための事例と理論の貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
本共同研究は、1) 紛争・衝突に頻繁にさらされるボーダーランドにおいて、経験の記憶化の過程に働く力学を、とくに社会的境界とも言えるジェンダーや人種の昨日を重視して検討すること、2) これを踏まえて記憶のトランスナショナルな歴史の再構築に関する理論研究を行うことを目的とする。ヨーロッパおよびアジアにおける、戦争によって空間的・社会的境界が創出されるプロセスやその表象、住民への作用を研究する海外共同研究者との協働により、ナショナルな記憶のグローバルな本質とその言説化を歴史学・記憶論から明らかにする。 2022年度は、新型コロナウイルス感染症の流行から回復しつつある、共同研究研究者が所属するライデン大学(オランダ)に長期滞在し、共同研究を実施することができた。 共同研究者Maja Vodopivec氏は、アジアにおける記憶と歴史の抗争を専門とし、歴史学と平和学を架橋するインターディシプリナリーな仕事を遂行している研究者である。Vodopivec氏との共同研究を通して、代表者は主に以下の点について知見を深め、研究成果を生み出すことができた。第一に、ボーダーランドにおける紛争・衝突が、地域の物理的な復興より長い影響をもたらし、それはとりわけ、モニュメントや博物館展示、市民のナラティブの中に「記憶」の形で保存されること(空間的・社会的境界の創出と表象)、第二に、そうした表象は、過去の経験それ自体だけでなく、「想起」をめぐる同時代的な政治に大きく影響されること、第三に、そこにはドメスティックだけでなくグローバルな政治、および予想以上に知的潮流が反映されていることである。ボーダーランドにおける記憶の歴史化は、相互に直接的に接していない地域における同様の実践を参照しながらグローバルに展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で延期を重ねていた渡航を実施することができ、共同研究者と議論を重ねることで、課題への理解を深めることができた。また、滞在中にヨーロッパ内の各地を訪問し、現地の研究者や史資料に接して、刺激を受けながら知見を広げることができたことも成果である。 数本の論文(執筆中を含む)の他、学会・研究会における報告・コメントなどに共同研究の成果を反映することができた。
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今後の研究の推進方策 |
海外における共同研究の成果のうち未発表のもの(ヨーロッパと日本の歴史的経験の、ジェンダー視点からの比較など)を完成させ、刊行に漕ぎ着けること、不足する調査を実施し、最終年度における成果発表に向けて研究を遂行する。
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